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波紋 九重閉館<上> 舘山寺の活気どこへ 

2021年10月16日 05時00分 (10月16日 05時03分更新)
新型コロナウイルス禍により昨年4月から約1年半にわたって休業が続いているホテル九重=15日、浜松市西区舘山寺町で

新型コロナウイルス禍により昨年4月から約1年半にわたって休業が続いているホテル九重=15日、浜松市西区舘山寺町で

 遠州を代表する観光地、舘山寺温泉のランドマークが姿を消す。団体客を中心に、延べ二百五十万人以上が宿泊したホテル九重(浜松市西区)。新型コロナウイルス禍で休業したままの静かな幕切れに、地元ではさらなる「地盤沈下」を懸念する声もある。跡地の活用はまだ白紙。舘山寺の今とこれからを追う。
 閉館が発表された十五日午後、九重周辺の温泉街は閑散としていた。ホテルは、飲食店が立ち並ぶ目抜きのそば。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言は今月に解除されたが、まだ活気はない。
 「ブランド力のある旅館が営業終了となって寂しい。舘山寺地区にとって、かなり影響があると思う」。ホテルのそばで、カフェなどが入る施設「HAMANAKO ENGINE(浜名湖エンジン)」を運営するリ・レーションの高橋秀幸社長(49)は、声を落とした。自身も二十年ほど前に社員旅行で利用した。「温泉もあり、ロケーションが素晴らしかった」
 舘山寺地区の開発を手掛けてきた遠州鉄道が九重を開業したのは、バブル経済まっただ中の一九八七年。直後の数年は特ににぎわった。当時宿泊した浜松市中区の主婦(61)は、三十年前のことをよく覚えている。大きなガラス張りで、浜名湖が見渡せるロビーでは琴が生演奏されていた。丁寧な接客。夜には花火も上がった。「ずっとここにいられる」と思うぐらい、居心地が良かった。
 ただ、バブル崩壊後の不況や、個人や少人数での旅行が主流になったことで、団体客の予約は次第に減った。九重は温泉施設を改装するなどしたが、大きな集客にはつながらなかった。追い打ちをかけたのがコロナ禍。昨年四月に休業後、営業を再開できなかった。
 近くのうなぎ料理店の女性は「九重が閉まったら、より観光客が減るのでは」と心配しつつも、「舘山寺はもともと観光する場所も少なく、コロナ禍以前から訪れる客は少なかった」と課題も口にする。
 舘山寺ではほかの宿泊施設も、大きな宴会場があり、大型バスを受け入れる団体客向けが多かった。舘山寺温泉観光協会顧問の稲葉大輔さん(47)は舘山寺全体にとっても「九〇年代がピークだった」と振り返る。九重の閉館も「新しく次の展開ができるので前向きに捉えたい」と受け止める。
 地元は閉館を惜しみつつ、今後への期待も込める。舘山寺の舘賢聖(たちけんせい)住職(54)は「まさに地域の象徴だったが、高級で泊まるには少しハードルが高く、住民には近くて遠い存在だった。今後は地元の人たちもみんなで楽しめるような場所になってくれたら」。近くの大村酒店社長の大村裕之さん(65)も「地元の企業が管理し続けてくれるほうが安心。今度は団体用ではなく、個人も楽しめる高級旅館などができたらうれしい」と話した。 (広瀬美咲、山手涼馬)

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