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「加賀竿」大漁注文 コロナ禍 密避ける釣り人気

2021年10月14日 05時00分 (10月14日 12時12分更新)
新しい種類の釣り竿作りに挑戦する中村滋さん。コロナ禍でタナゴ竿などの注文が増えている=金沢市で

新しい種類の釣り竿作りに挑戦する中村滋さん。コロナ禍でタナゴ竿などの注文が増えている=金沢市で

新商品にも挑戦「伝統守る」

 コロナ禍で「3密」を避けるレジャーとして釣りの人気が高まる中、藩政期から伝わる「加賀竿(さお)」の唯一の職人中村滋さん(64)=金沢市額谷=が製作したオーダーメードの釣り竿の注文が増えている。伝統の技法を生かした逸品で、手軽に楽しめるコンパクトなタナゴ釣り用の竿は若者にも好評。「新しい種類の竿づくりに挑戦し続けることで、伝統を守っていきたい」と思いを語る。(瀬戸勝之)
 「年間に作れるのは四十本ほど。今だと一年は待ってもらう」。市郊外の閑静な住宅街にある工房で、中村さんは作業に追われている。竹の採取に火入れと、工程は百以上。コロナ禍で注文が増え、納期を以前の半年から延ばした。
 江戸時代、外様大名の加賀藩は表だった武芸の訓練を避け、野外での釣りを奨励した。「河原を歩きながら心身の鍛錬を」と持たせた長尺の竹竿が加賀竿の源流。当初は主にアユの毛針釣り用だったが、戦後にフナ釣り用や渓流釣り用も作られるようになった。
 中村さんは幼いころからの釣り好き。特別支援学校の教師をしていたが体を壊し、十年前にあこがれだった加賀竿職人の世界へ。漆を塗り重ねて生まれる丈夫さと、工芸品としての美しさを兼ね備えた竿に根強いファンがいる一方、カーボン製が主流の今、取り巻く環境は厳しさもある。
 そこで中村さんは「時代に合わせた加賀竿で新たな需要をつかみたい」とルアー竿や海釣り竿づくりに挑戦。昨年、新作のマダイ釣り用の竿を発表した。装飾にもこだわり、金箔(きんぱく)や銀箔に加え、アワビの貝殻やオパールの粉を用いるなど、試行錯誤を続けている。
 コロナ禍で特に人気が高まっているのはタナゴ釣り用の竿だ。価格は三万円台からで、持ち運びに便利な専用の収納ケースも付く。テンカラという毛針を使う渓流釣り用の竿の注文も増えている。
 写真投稿サイト「インスタグラム」を通じ、全国の若者からも問い合わせがある。「渋くて格好いい」「狙ったポイントにズバッと入ります」「和竿とは思えないキレ。そしてパワフル」と反応は上々だ。
 中村さんは加賀竿の良さについて「カーボン製の竿と違い、竹製の和竿は低反発でしなる。魚が暴れにくいので、ゆったりと引きを楽しめる」と強調。「漆塗りも使い込むほど味わいが増す。丁寧に手入れをして長く、大切に使い続けてもらえれば」と話す。

(メモ) 加賀竿 金沢市で生産される伝統的な竹製の釣り竿。江戸時代後期に竿師が現れ製作が始まった。竹を高熱加工して強靱(きょうじん)さを加え、塗装、接着にと種類の異なる漆を数回から十数回にわたって塗り重ねる製法に特徴がある。1950年代には約60人の職人がいたが、現在は中村滋さん1人になった。


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