【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】 (14)大切な出会い

2019年2月23日 02時00分 (5月27日 05時07分更新)

2人が式を挙げた教会=東京都内で

次々と未来をつかむ若者

 昨年十一月、韓国人の友達・チャンス君と、新婦となる陽子さんの結婚式に参列するため、東京のとある教会を訪れた。どこまでも澄んだ青空が気持ち良い日のことだった。微笑(ほほえ)みを浮かべ幸せそうな二人の様子に、参列者たちが二人を温かく祝福する様子に、人と人が出会うことの不思議さを思った。
 チャンス君はもともと当店の常連さんで、仕事がお休みとなる週末ごとにやってきてはカフェオレを注文してくれた。日本のインディーズバンドや、日本的と言えるシンプルなモノや空間がお好きで、当店のことも気に入ってくれたよう。素敵(すてき)なリュックを持っているなと思い聞いたら、ソウルでは売っていない日本のプロダクトだという。また日本語が読めるわけではないのに、私も知らない日本最新の音楽まで掘っていて、その探究心には驚かされたものだ。
 そんな彼が突然「日本に住んでみたい」と言い、日本語を勉強しはじめた。いつかの夢の話なのだろうと思ったら、一年後には職場に辞表を出し、東京の語学学校に入学。思わず感動するほどの行動力だった。

「二人」(2019年)

 二〇一六年の春から日本に住みはじめた彼は、すぐ日本語を覚えたばかりでなく、行きつけのカフェやバーなど大切な居場所を見つけ、そして陽子さんというお似合いの女性と出会うことになる。学校を卒業するなり東京での就職先を探し出し、陽子さんのご家族とも関係を築き上げ(二人が陽子さんのご両親を連れて、ソウルの当店をサプライズ訪問してくれた時は、本当に驚いたし嬉(うれ)しかった)、夫婦としての新生活をスタートさせた。さらに今年から、また新たな職に就いたという。彼が働くその場所は、ソウルで愛用していた素敵なリュックを買ったあのショップだ。
 次々と未来を掴(つか)んでいくチャンス君の奮闘ぶりを聞くにつれ、自分たちも負けていられないなと刺激を受ける。そして彼の大切な出会いの、出発地点のひとつに雨乃日珈琲店があったのなら、こんなに嬉しいことはないと思う。(文・清水 博之、書・池多亜沙子/しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=金沢市出身、書家)

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