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「できないつらさ」知って 気付きにくい読み書き障害

2021年10月14日 05時00分 (10月14日 05時00分更新)
特別支援教育支援員養成講座で、読みの困難さを解説する吉田さん(中)=名古屋市東区のウィルあいちで

特別支援教育支援員養成講座で、読みの困難さを解説する吉田さん(中)=名古屋市東区のウィルあいちで

 生まれつき文字を読んだり書いたりするのが難しい「発達性ディスレクシア(読み書き障害)」。日常会話や論理的思考は問題がないため、周囲が気付きにくく、学校では指導や配慮がまだまだ行き届いていない。理解が広まるよう、支援団体は学校に関わる人らを対象に講座を開くなど地道な活動を続けている。 (加藤祥子)
 「さくばんのうちににわにはつゆきがふった」。スクリーンに文章が現れる。「読むのと同時にイメージが浮かびますよね。でも発達性ディスレクシアの子たちは一文字ずつ読んでいくので、それが難しい」。九月に名古屋市であった、特別支援教育支援員を目指す人が対象の講座。ディスレクシア協会名古屋の代表、吉田優英(やすえ)さんが説明した。
 支援員は、発達障害などがある子どもらに、学習面や生活面でサポートする職員だ。特別な資格はいらないが、専門的な知識を身に付けてもらいたいと、同協会などが二〇一〇年から講座を開き、当初から発達性ディスレクシアも取り上げている。
 この障害は、見た文字を頭の中で音に変えづらく、読む時につかえることがある。頭で考えた言葉を文字に表せず、漢字を書けないケースも。しかし学校現場で理解が進んでいるとは言い難く、「努力不足だ」などと言われ続けたため自尊感情が低下している子たちがいると、吉田さんは指摘する。
 「生まれつきなので、頑張れと言われてもどうしていいか分からない。それを分かった上で支えて」。タイピングを覚えればデジタル機器で文章が打てるようになることや、問題文などを読み上げれば理解できる子もいる−と、学校での配慮の方法も伝えた。
 協会の講座の受講経験があり、名古屋市の小学校に勤務する支援員の永峯美千瑠さん(43)は、スクールカウンセラーから相談を受け、不調のある児童を読み書きなどの検査へつなげた。検査で九月に読み書きの困難さが判明。児童の意向に沿った支援を担任らと進めていくことになった。
 学校側も手をこまねいているわけではない。愛知県犬山市は九月末、十四小中学校の教頭を対象に、ディスレクシアの研修会を開いた。講師を務めた吉田さんは、できないつらさを感じてもらう体験も盛り込んだ。スクリーンに映る図形から文字を読み取れると席に座れるルール。立ちっぱなしの人に、「ちゃんと勉強してる? なんで読めないの?」と追い打ちをかける。
 読めなかった中学の教頭(56)は「正直むかついた。できないことを何回も言われる気持ちが理解できた」。小学校の教頭(46)は「振り返るとどうしても漢字が書けない子はいた。学校に戻ったら教員と共有する」と話した。今後、それぞれの学校で支援方法を考えてもらう予定だ。

 発達性ディスレクシア(読み書き障害) 学習障害(LD)の一つ。日常会話や論理的思考に問題はないが、読み書きに困難さがある。後天性と区別するため、生まれつきの場合は「発達性」と表現する。宇野彰・筑波大元教授が2009年に実施した調査では、出現率は小学生で7〜8%。40人学級で2〜3人いる計算となる。

 特別支援教育支援員 小中学校などで特別な支援を必要とする児童生徒らを学習面や生活面でサポートする。文科省が2007年から配置を進め、全国に約6万6000人いるが、採用数は各自治体に任されている。

検査からの早期対応が重要 専門家

 元筑波大教授で、発達性ディスレクシア研究会の宇野彰理事長(68)は、子どもの状態の把握には「検査が効率がいい」と指摘する。宇野さんが取り組んだ文部科学省の委託研究事業を機に、茨城県つくば市は二〇一六年から一部の学校で、検査を経て指導につなげている。
 小学校入学前の五〜六歳児を対象にした就学時健診で、三十秒程度で済む簡単な検査を実施。読みに不安がある子を把握し、配慮しながら授業を進める。七月は集団でひらがなの読み書きを検査する。夏休みの個別面談と家庭学習の後、九月に再び同じ検査をする。その時点で読み書きの習得が遅れている子には、専門的な研修を受けた教員が、その子にあった指導を進める。
 個別練習の結果、読み書きに困難のある児童も、基本となるひらがなの読み書きができるようになったという。この成果を受け、同市は全小中学校に広めようと、昨年度から専門的な指導ができる教員の育成も始めた。
 宇野さんは「指導方法を変えるとできるようになる子がいる。適切な指導が子どもに自信を取り戻させるステップになる」と、早期に発見し、対応する必要性を訴える。

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