【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】 (18)軽やかでいい距離感
2019年6月22日 02時00分 (5月27日 05時07分更新)
「中くらいの友だち」の輪
韓国を語らい・味わい・楽しむ雑誌、『中くらいの友だち』最新号となる五号が、二十日に発売された。ジャーナリストの伊東順子さんを中心に、長年韓国と関わる書き手たちが原稿を持ち寄った同人誌であり、二〇一七年四月に創刊して以来、不定期でマイペースに発行されている。
内容は散策から食、音楽、文学、人生まで幅広く、私は韓国のタワーをめぐる旅行記を、妻は扉題字を寄稿。他では読めない韓国についての話題が並び、おかげさまで好評を得ているようだ。日韓関係が何かとややこしいご時世、中くらいの距離感で韓国を語り合うこの雑誌に参加させてもらえたことを嬉(うれ)しく思っている。
伊東さんは、私が雨乃日珈琲店を始める前、韓国カルチャー誌の編集部にいた時からお世話になっていたが、「中(ちゅう)とも」への参加は、当時の上司であり弘大で老舗のカフェを経営する、きむ・すひゃんさんが声をかけてくれたことがきっかけとなった。
書き手の中には、以前から当店と関係のある方も。弘大で二十年前から活動する日本人ミュージシャン・佐藤行衛さんは、二年前から当店にて毎月、八〇年代以前の日本の音楽をかけるDJイベントを行ってくれている。韓国語教師のゆうきさんは、もともと当店を頻繁に訪れる常連さんだった。さらに最新号では、当時留学生で「中とも」購読をきっかけに当店を愛用してくれた小林彩さんも、新たな執筆者となっている。
「中くらい」とは何とも肩の力の抜けた、喧噪(けんそう)の上を軽やかに飛び越えられる魅力的なワードだと思う。この本が始まってから、おかげさまで新しい関係が生まれ、お店に寄ってくれる人も増えたが、当店を「中くらい」のお店だと思ってもらえると嬉しいし、また「中くらい」の輪が広がってほしいと願い、日本からのお客さんに本をお勧めしたりもする。
『中くらいの友だち』は、金沢のオヨヨ書林せせらぎ通り店をはじめ、大型書店やネットで手に入る。見かけたらぜひ手に取ってみてください。(しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=書家、金沢市出身)
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