【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】(28)家具屋通りの異変

2020年4月25日 02時00分 (5月27日 05時07分更新)

文・清水 博之 書・池多亜沙子

共存どうなる 隣にカフェ

「竝立(へいりつ)」(2020年)。ならびたつ。篆書(てんしょ)で

 二〇一〇年にオープンした頃、雨乃日珈琲店のある百メートルほどの道は家具屋通りとして知られていた。ところが一六年に近所の鉄道跡地が公園になってからはカフェが増え、おかしなことになりはじめている。
 最初に異変が起きたのは当店すぐ隣の物件だ。もともとは「ファニチャーカフェ」という紛らわしい名前の家具屋だったのだが、ある日を境に突如、ガラス戸にドリンクの価格表が張り出された。店名と外観はそのままに、内装をちょっと変えてカフェとしての営業を始めたのだ。わざわざカフェの隣でカフェをやらなくても…と思ったが、家具屋の家具が並ぶ以外に特徴のないその店は一年でなくなり、空き物件となった。
 しばらくして今度は、資本力のありそうなおしゃれカフェが三軒隣に登場。さらに昨年には、何と当店の真向かいもカフェになった。その物件は、建物大家の息子さんが経営しているらしく、数年おきに食堂、居酒屋と新たな店を開いては畳みを繰り返していたのだが、今度はカフェに手を出すとは。ちなみに息子さんひとりで店をまわしているのにもかかわらず、何と二十四時間営業だ(深夜に店員は誰もおらず、セルフサービスらしい)。

当店の隣に、黄色いカフェが出現しつつある=ソウルで

 わざわざカフェの向かいでカフェをやらなくても…と思ったが、そのお店のローコスト路線は当店とかぶることはなく、時々息子さんと目が合うのが気まずいという以外に、大きな問題はなかった。幸運にも当店は、デザートが美味(おい)しいカフェとして韓国の人に認識されている。そのため、写真映え命のインスタグラマーが集うおしゃれカフェとも、客層はかぶらない。
 というように三軒のカフェが絶妙なバランスで共存していたのだが、先々週から伏兵が。当店隣の、家具屋の後の空き物件が工事を開始し、またもやカフェになるようだ。さらに現場を覆っていた垂れ幕を見て絶句した。店名は「アカシア菓子店」だという。わざわざ隣の当店と似ている名前を付けなくても…。
 これから一体何が起きるのか。毎日おかしなことばかりである。(しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=書家、金沢市出身)

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