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オオサンショウウオ在来種ピンチ! 各地で広がる日中交雑種

2021年10月8日 16時00分 (10月14日 18時37分更新)
 国内最大の両生類オオサンショウウオ。特別天然記念物の在来種と、中国から輸入された外来種が交配した「交雑種」が三重県名張市などで次々と見つかっている。京都市の調査では9割以上が交雑種と判明した河川もある。在来種が絶滅する恐れがあり、行政や研究機関が交雑種を捕獲して隔離する地道な活動を行っている。(帯田祥尚、岡屋京佑)

プールで隔離飼育される交雑種=三重県名張市で

 名張市の廃校になった小学校のプールでは現在、市が川で捕まえたオオサンショウウオ百八十匹を隔離している。体色は黒や茶で、体長は大きいもので一メートルほど。DNA鑑定待ちの個体もいるが、ほとんどが中国の外来種との交雑種と判明している。
 交雑が進んだのは、日本と中国が国交を回復した一九七〇年代からという。食用として中国から輸入した外来種が野生化し、自然界で人知れず繁殖を続けたためとされる。後にワシントン条約の保護対象となって国際間商業取引が禁止され、今では外来種自体が見つかることはまれ。だが、交雑種は名張市など三重と奈良の県境の川や岡山県でも確認されており、交雑の連鎖に歯止めがかからない。
 特に深刻なのは京都市を流れる鴨川水系だ。市文化財保護課によると、二〇一一年以降の調査で90%以上が交雑種と判明している。現在用いられるDNA鑑定の方法を確立し、調査にも協力した国立科学博物館の吉川夏彦研究員(39)は「自分が見慣れていたオオサンショウウオが、実は交雑種と分かった時はショックだった」と振り返る。

オオサンショウウオの交雑種を飼育するプールがある名張市郷土資料館=三重県名張市で

 このため、交雑種の捕獲と隔離を各地の行政と研究機関が進める。野生のオオサンショウウオを一匹ずつ捕まえ、全てにID代わりのマイクロチップを挿入。採取した尾の一部からDNA鑑定をして交雑種や外来種と分かれば、野生に戻さず、専用の施設に収容する。名張市の場合、百八十匹の年間飼育費に五十万円を費やすが、オオサンショウウオは五十年以上生きるとされ、施設の維持や費用面から、いつまで飼育できるかは分からない。
 三重県松阪市に事務局がある日本オオサンショウウオの会で保護活動に携わる清水善吉さん(63)は「二〇〇〇年代にDNA鑑定ができるようになるまで、交雑種という概念がなかった。これだけ広まると、交雑の流れを止めるのにどれだけの年月がかかるか分からない」と懸念する。

暗闇の中、懸命に調査 記者が同行

 自治体はオオサンショウウオの調査や捕獲を外部の専門機関に委託する場合もあり、ボランティアも活躍。その一人、三重県名張市の職員川内彬宏(よしひろ)さん(35)は公務ではなくプライベートで携わる。九月中旬の夜、国の許可を得て行う調査に記者二人が同行した。

オオサンショウウオの体長などを測る川内さん=名張市の滝川上流で

 赤目四十八滝を中心とした市内の渓谷は有名な生息地。夜行性のオオサンショウウオが姿を現す午後七時半、足首がつかる程度の浅瀬に入った。暗闇の中、せせらぎが響く川面を懐中電灯で照らして歩くこと約十分。川底の岩が動いたように見えた。目を凝らすと、水中に体の輪郭が浮かび上がる。
 「おー、いる」。記者の一人が声を上げた。体長六〇センチほど。茶色の肌に黒い斑紋(はんもん)が広がる。光を当てても動じず、水中の岩の上をゆっくりと歩く。行く手に捕獲用のたも網を差し出すと、自分から入ってくるほど警戒心が薄い。「人に襲われたことがないので逃げない」と川内さん。
 捕まえたのは、既に左肩にマイクロチップが埋め込まれた在来種だった。機械で読み取ると、川内さんが一年四カ月前に出合った個体と分かった。川岸に計測器を広げて成長を記録し、捕獲した場所に放した。
 この日は午後九時ごろに終えたが、翌日午前二時まで川の中で過ごすこともあるという。新しい個体がいれば、DNA鑑定のためにネットに入れて持ち帰る作業も加わる。重労働のため、誰もができるわけではない。しかし、交雑化にあらがうすべは他にない。「放っておけば、みんな交雑種になってしまう」。川内さんは警鐘を鳴らす。

 特別天然記念物 文化財保護法に基づく天然記念物の中でも特に重要な動植物、地質、鉱物、保護区域。動物では1952年指定のオオサンショウウオの他にイリオモテヤマネコ、カモシカ、コウノトリ、ライチョウなど。捕獲や飼育が禁止されている。

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