大谷翔平は「物差しを自らつくらなくてはならない宿命」イチローさんのコメントで”記者泣かせ”の答えが出た
2021年10月7日 11時00分
記者泣かせ。私が大リーグ、エンゼルスの大谷翔平に抱くイメージだ。なぜ、という疑問が沸くかもしれない。投打にわたる活躍で、今季の成績は文句なしだ。スポーツのシンクタンクとして政策提言や調査研究を行う笹川スポーツ財団がこのほど発表した今年の「青少年の好きなスポーツ選手ランキング」でも、12~21歳の回答者1663人への調査で2位の羽生結弦(フィギュアスケート)に大差をつけて1位となっている。
報道陣への対応でも試合後はコメントし、さまざまな節目でも会見にはしっかり応じる。これの、どこが記者泣かせなのか。監督時代の故・星野仙一さんには怒鳴られることを覚悟で質問し、選手時代の落合博満さんからはひと言を取るのに四苦八苦し、イチローさんには「記者もプロならしっかり考えて質問してください」と発せられないように緊張感に包まれて…。個性あふれる監督や選手たちに泣かされ続けてきたのに、不思議な感情だと自分でも思っていた。
その答えをズバリと出してくれたのは、ほかならぬイチローさんだった。現在はマリナーズ会長付特別補佐でもあり、今月3日(日本時間4日)に今季全日程を終えた大谷に関してコメントを出した。
「大谷翔平と言えば二刀流、無限の可能性、類いまれな才能の持ち主、そんなぼんやりした表現をされることが多かったように思う」
これだ、と思った。大谷に関して今年の活躍をどのように思うかを聞かれても「凄いですね」としか答えられない。野球を担当してきた記者でありながら、私はそんな「ぼんやりした表現」しかできないことに疑問を抱いていたのだ。イチローさんは続けて、その背景も解き明かしている。
「比較対象がないこと自体が誰も経験したことがない境地に挑んでいる凄みであり、その物差しを自らつくらなくてはならない宿命でもある」
ベーブ・ルースの再来と言われても、100年以上も前のルースは記録でしかその凄さは分からない。時代も大きく移り変わっているので比較対象のしようがなく、見ている方は大谷自身が作る物差しを眺めていることしかできない。そのため、さまざまな視点や事象を組み合わせて記事を書くことには困難を要す。まさに記者泣かせだ。それを的確な言葉で表現したイチローさんに、あらためて感心すると同時に感謝した。
イチローさんはコメントの最後をこう締めくくっている。
「考え方はさまざまだろうが、無理はできる間にしかできない。21年のシーズンを機に、できる限り無理をしながら翔平にしか描けない時代を築いていってほしい」
今でも賛否両論ある二刀流に対して、イチローさんならではの考え抜いた表現ではないかと思う。大谷翔平とイチローさん。これもまた、今後のメジャーリーグを見る楽しみの一つである。
◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長、同論説委員などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまで中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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