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落合野球の中日で異質の個性…計算不能の大仕事した藤井淳志 “一皮むけなかった”からこそ彼はファンに愛された

2021年10月6日 10時30分

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引退会見で笑顔を見せる藤井

引退会見で笑顔を見せる藤井

◇渋谷真コラム・龍の背に乗って
 今季限りで現役を引退する中日・藤井淳志外野手(40)が5日、バンテリンドームナゴヤで記者会見を行った。用意してきた涙はしまい、笑顔満開で16年間在籍した球団へ感謝の思いを口にした。
   ◇     ◇
 常勝軍団を率いた落合博満元監督は、こんな言葉を残している。
 「このチームには自分を過小評価するやつと過大評価するやつがいる」。それ以上は言わなくても、過小は荒木で、過大の代表格が藤井淳志を指すのはわかった。
 「もっと頭を使って野球をやらなくちゃな。もっとも事情を知らない連中は、オレが藤井を嫌いだと思うんだろうけど」
 好きか嫌いかではない。堅実と安定を優先し、計算の立つ選手を重用するのが落合野球だった。藤井はといえばビッグプレーかボーンヘッド。でも当時の中日では異質の個性が、僕は好きだった。たとえ過大評価でも、計算不能の大仕事をやってくれるからだ。
 「ああしたら良かった、こうしたら…。落合監督の時に、もう少し僕が素直にというか、大人だったら、一皮むけていたのかなと」。引退会見でほんの一瞬、見せた悔い。20代ではわからなかったことが、40歳になって飲み込める。サラリーマンでもしみじみとうなずける言葉だった。
 「オレを使え」「オレならできる」。そんな藤井の原体験は、2008年にある。落合時代に登竜門だったドミニカ共和国のウインターリーグ。投手が中心だったが、藤井も「リセイタイガース」で戦った。しかし、わずかに3打数1安打。2年前のナ・リーグ新人王にして、翌09年には首位打者に輝くハンリー・ラミレスら実力者ひしめくチームの中に、日本人野手の入る余地はなかった。
 誰もが拳銃を持っていた。球場に着けば弾を抜く。それが仲間の前でのおきてだった。「夜道では赤信号でも決して止まるな」と教わり、のし上がった大リーガーの大豪邸を見上げて知った。
 「本物のハングリー精神って何なのか。チャンスは少ない。それをつかんだ人生とつかめなかった人生。試合にはほとんど出られませんでしたが、学んだことは本当に大きかった」
 堅実と安定、大いに結構。でも一人くらい「オレを使え」と叫ぶ選手がいたっていいじゃないか。だって一皮むけなかったからこそ、彼はファンに愛された。

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