安打数と盗塁数“名球会員”荒木コーチの同時期抜く…「人生は変えられる」開幕前宣言した中日・高松の現在地と未来
2021年10月4日 10時44分
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇3日 阪神1ー0中日(甲子園)
この3試合、得点も失点も本塁打のみ。空中戦では分が悪いのは、最初からわかっている。優勝が完全消滅し、3位とも10・5ゲーム差ある以上、もう来季を見据えて戦うべきだ。小さくてもいい。しつこく、手堅く、したたかに。例えば2番で起用した高松が、3回に中前打で出て、大島の初球に二盗を決めた。
「塁に出ないと自分の長所が生かせないので、どんな形でも出ることを考えています。最近、なかなか走れなかったのですが、引きずってはいけないので、初球からスタートを切れてよかったです」
8日前に彼は左投手からまだ盗めないと書いた。すると「ちょっと落ち込んでましたよ」と耳打ちしてくれた人がいた。だから…。というわけではないが、高松の現在地と未来について書く。
高卒4年目。昨季まではヒットも盗塁もなかったが、この日で19本目であり、盗塁も14まで増えた。高松が苦しんでいた2軍時代からともに泣き、笑い、叱ってきたのが荒木内野守備走塁コーチ。同じように俊足を期待され、高卒で入った荒木コーチの4年目までと比較して驚いた。荒木は安打、盗塁ともに13。高松は安打数ではすでに超えており、盗塁もこの日で抜いた。僕が伝えるより前に、荒木コーチは気付いていた。
「そうなんですよ。それを高松にも言ったんです。エヘヘって笑ってましたね」
ただし2軍でもがいていた荒木は、ここから球団記録の378盗塁を打ち立て、2045安打で名球会員となった。開幕前、高松は荒木コーチにこう言ったそうだ。「人生は変えられるんです」。まさしく人生を変えた最高の実例に、そう宣言したわけだ。
「そのためにはここからです。まだやるべきことは山ほどあります。僕は練習だけはやりましたから」。30年以上プロ野球を見てきたが、荒木より練習する選手は見たことがない。向上心だけではなく、耐えうる体力こそが最大の才能だったと思う。高松が本当に人生を変えられるかは、この先に懸かっている。
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