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中日春秋

2021年10月2日 05時00分 (10月2日 05時01分更新)
 「丸い四角」でも「冷たいお湯」でもいいのだが、言葉にはできても、実在しえないものがある。一見して、そのたぐいの表現に思えた。「美しいゴキブリ」。しばらく前のニュースで、実在すると教わった
▼朝の話題には向かない生き物と承知しつつだが、この仲間にとって精いっぱいとも思える美しさに免じ、お許しいただきたい。沖縄県の宮古島で発見されたという「ベニエリルリゴキブリ」である
▼美麗とされるルリゴキブリというのが、わが国にもいて、その新種なのだという。環境省のサイトなどで見ると、全体の造形やそれぞれの部位は、やはりこの生物である一方、光沢のある羽に、帯状のオレンジ色がたしかにうるわしい。世界で嫌われるこの生物への固定観念を少々揺さぶる見栄えのようである
▼身近なところに出る「やつら」が嫌われる理由の一つは外見だろう。あの色は人間が誕生するはるか前からすんでいた森の保護色らしい。朽ちた木や腐葉土の色だ。森を切り開き進出してきた人に、それが嫌われたと思えば、因果な生き物に思える
▼ルリゴキブリの仲間はネットでさかんに売買されているそうだ。絶滅を案じて、環境省は宮古島の新種を、種の保存法に基づく緊急指定種とし、捕獲などを禁じた
▼美しければ捕まえられ、そうでなければ毛嫌いされる。「ゴキブリへの同情」。実在するものらしい。

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