本文へ移動

地域づくり協組 地方創生の切り札に

2021年10月2日 05時00分 (10月2日 05時00分更新)
 人口が急減している地方で、安定的に働き口を確保するための国の新制度が始まった。地元業者が組合を結成し、国や地方自治体が運営費の半額を補助する。季節や時期による繁閑の差が激しい地方の労働環境を踏まえ、例えば農繁期は田畑に、冬はスキー場に人を派遣するイメージだ。
 新制度は昨年六月に施行された「特定地域づくり事業推進法」に基づき、市町村が事実上主導し、四社以上の業者が「特定地域づくり事業協同組合」をつくる。都道府県知事の認定を得ると、派遣事業の規制が緩和され、国や市町村から財政支援を受けられる。総務省のまとめによると、一日現在、山陰地方を中心に十三道県の計十九協組が認定された。
 隠岐諸島に位置する島根県海士(あま)町の協組は五社で構成し、新制度を機にIターンした六人を採用した。町によると、一例として、ある職員は四〜六月に定置網漁で特産のイカなどを漁獲し、七〜九月は加工会社に勤務。十月から隠岐牛を肥育し、厳冬期は再び漁に出る。年二百四十万〜三百十万円の給与と賞与、昇給が約束され、厚生年金や健康保険にも加入できる。担当者は「見知らぬ町で、いきなり漁師や農家になるには相当の覚悟がいる。この制度なら移住のハードルが下がる」と話す。
 総務省の意向調査によると、全国千七百十八市町村の四割近くが新制度の活用に前向きだ。国は「東京一極集中」を是正しようと人や企業の地方移住、移転を促し、まちおこしに財政援助するが、多くの支援は期限付きで「いずれは自立」を前提とする。
 新制度は民間事業の人件費に国費を投じることに加え、無期限の支援である点も目新しい。移住者以外も認められており、若者の流出をとどめる効果も期待できる。
 課題は新制度の認知度不足だろう。中部・北陸地方で唯一、認可された長野県生坂村の協組は八月から一カ月、職員三人を募集したが、応募はゼロ。巨峰やシイタケの産地で知られ、農繁期はブドウや水稲の手伝い、それ以外は介護や建設現場などを想定し、引き続き募集している。
 現時点では、都道府県による支援態勢やPR面でも地域によって温度差があるようだ。より魅力ある多様な働き口の開拓も含めて、周知が進み、地方創生の切り札の一つになることを望みたい。

関連キーワード

おすすめ情報