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ロンシャンの芝、条件次第では北海道2場の芝と大差なし 日本馬のハンディにならないように思える【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2021年10月1日 06時00分

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最終追い切りを行うディープボンド=仏エーグル競馬場で(JRA提供)

最終追い切りを行うディープボンド=仏エーグル競馬場で(JRA提供)

 ◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 凱旋門賞ウィークである。日本からはクロノジェネシス、ディープボンドが参戦し、武豊は日本の馬主キーファーズがクールモアと共同所有するブルームに乗る。有力馬の一角に推されるスノーフォールはノーザンファーム生産のディープインパクト産駒。何らかのカテゴリーでパリの空に日の丸が上がる可能性が例年より大きい。
 日本から初めて凱旋門賞に出走したのは1969年のスピードシンボリ。以降、半世紀に以上でのべ27頭が挑戦して悲願に手が届いていないことの理由によく挙げられるのは「馬場適性」だ。いわく「欧州の芝は重い。適性が必要だ」と。
 13年に初めて渡仏するまでは、そういうものだと思っていた。けれど、シャンティイ・エーグル調教場の芝を取材してからは、単なる思い込みである可能性が大きいと考えるに至った。芝の品種や、クッションを得る構造はよく似ている。
 日本の芝が「軽い」と言われるのは主に野芝を想定している。野芝は地下茎(ほふく茎)が横に広く伸び、近隣の株と絡み合う。クッションとして機能するのはこのネット構造だ。対して北海道2場で使われる洋芝は、ほふく茎が少なく、株を密に成育して、芝草と根がクッションとなる。
 エーグル調教場は、日本からの遠征馬がしばしば使うシャンティイの調教施設である。今回の遠征2頭も現地では同場で乗り込んでいる。ここの芝は「イングリッシュライグラス」という品種。洋芝の中でもほふく茎がよく伸びる。日本の野芝よりほふく茎は細い一方、株あたりの数が多くネット構造も強い。蹄の衝撃を受け止める力学的仕組みは、日本の野芝と同じだ。欧州にも日本の「野芝」と相同とみなせる芝馬場が存在している。
 パリロンシャンの芝コースは主にペレニアルライグラス。北海道2場の芝馬場を構成する主要な品種のひとつだ。水はけのよさに差はあるかもしれないが、好天下であれば北海道2場の芝と条件は大差ない。夏場に「洋芝適性」を考える程度の適性の差は、世界の頂を争う文脈において、どれだけ重要だろうか。良馬場であれば、走りが軽いと評される馬に、決定的なハンディはないように思える。

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