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<町内会長日記 コロナ時代の共助> (14)高齢者の防犯 

2021年10月3日 05時00分 (10月7日 17時55分更新)
緊急事態宣言が出る中、防犯パトロールに出発する防犯委員の二村さん(左)ら=名古屋市北区で

緊急事態宣言が出る中、防犯パトロールに出発する防犯委員の二村さん(左)ら=名古屋市北区で

 先日、近所の現金自動預払機(ATM)を訪れたときのこと。「ここに電話しなきゃいけないのに、かけ方が分からなくて」。初老の女性が慌てた様子で駆け寄ってきた。手には電話番号を走り書きしたメモ。スマートフォンの扱いに不慣れなようだった。
 待てよ、この状況って。胸騒ぎがして「詐欺ではないか」と忠告した。だが、「銀行のコールセンターだから大丈夫」と取り合ってくれない。失礼とは思いつつ、電話を立ち聞きさせてもらった。どうやら、脳裏をかすめたニセ電話詐欺ではなく、いらぬおせっかいをしてしまった。
 名古屋市北区の団地で町内会長をしている筆者(39)。過敏な反応は、近隣の町内会役員との雑談で、ある心配事を聞いていたからだった。
 「コロナで家に閉じこもっている高齢者が、犯罪に遭わないか」。町内会長に加え、防犯委員も務める二村巌さん(73)が漏らしていた。確かに、電話や訪問を手口とする詐欺グループにとって、ステイホームは好都合だろう。地元では侵入盗の被害が出たとの情報があり、留守を確かめるように玄関ドアをノックする不審者も目撃されたらしい。抵抗できないお年寄りが、犯人と鉢合わせしたら…。
 「この前、おばあさんの家の玄関灯が切れたままでな。『不用心だから』と頼まれて、電球を交換してきた」。高齢者の困り事を解決するボランティアメンバーでもある二村さんに聞き、そのお宅に案内してもらった。
 一人暮らしの「おばあさん」は八十八歳。春先まで体調を崩して入院し、同じ時期、夫に先立たれた。「怖いことがあるといけないでしょ。玄関灯のことが気になっていたの」と感謝しきりだった。
 実は、ボランティアに依頼したのは、本人ではなく、三十年以上の近所付き合いがある七十代女性だった。普段から、おばあさんが玄関先の花の手入れに出てくるタイミングを見計らい、声を掛けているという。「『ここが痛い』とかたわいもない話。急に一人暮らしになられて、心配でしょ」と女性。玄関灯の件も、立ち話の最中に聞き、代わりに頼んだ。良い意味のおせっかいに感心する一方、外出控えの期間が長引く中、ご近所力の維持が難しくなるのではないかと感じた。
 実際、このおばあさんも、友人とのモーニングを我慢している。貴重なおしゃべりの場であり、出掛けること自体が張り合いになっていた。「一人になり、急に物忘れが激しくなってしまった」。別の区で暮らす娘さんは米寿の母の衰えを感じ取り、毎日、様子を見に来ている。本当は介護施設に通わせたいが、持病のある母のコロナ感染が気になり、控えているという。
 電球を交換してくれた二村さんを「電気屋さん」と間違えて覚えていた母。詐欺などに遭わないかと心配で、娘さんは家の電話には出ないように伝えている。
 外出を控えれば感染リスクは減る。でも、孤立による犯罪の被害が気掛かり。二村さんたち防犯委員は、もどかしさを抱えながら防犯パトロールカーを走らせ、戸締まりなどを呼び掛けている。 (鈴木龍司)

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