本文へ移動

大名文化 伝える名品 「尾張徳川家の至宝」来月 石川県立歴史博物館

2021年9月25日 05時00分 (9月25日 11時51分更新)
 徳川美術館(名古屋市)の名品を集めた展覧会「尾張徳川家の至宝」が十月九日から、金沢市の石川県立歴史博物館で始まる。御三家筆頭の高い格式を誇る大名道具のコレクションを、加賀藩とのゆかりを交えながら紹介する興味深い企画だ。(鈴木弘)

【上】国宝「源氏物語絵巻」竹河(二)詞書(部分) 【下】国宝 初音蒔絵櫛箱、寛永16年(1639)


 注目は「源氏物語絵巻」(平安時代)と「初音(はつね)の調度」(江戸時代)、太刀「津田遠江長光(とおとうみながみつ)」(鎌倉時代)という三つの国宝。国宝が三件そろうことは地方では珍しく、十二世紀に描かれた現存最古の「源氏物語絵巻」が石川県内で公開されるのは四十二年ぶり。

▽「国宝」源氏絵巻 「豪華」婚礼調度

 徳川美術館は八十年以上、保存と公開を両立させるため三巻の源氏絵巻を十五の場面と二十八の詞書(ことばがき)に分け額装して所蔵してきたが、さらなる劣化の防止と本来の形での鑑賞に向けて二〇一六年から絵と詞書をつなぎ十五の巻物に仕立て直した。五年にわたる改装を終えてから徳川以外でのお披露目は今回が初となる。
 出品される国宝絵巻は、画面の華やかな「竹河(二)」(十月九日〜二十四日)と上からのぞく「吹抜屋台(ふきぬきやたい)」の構図が明快な「東屋(一)」(十一月八日〜二十三日)の二巻。十月二十五日から十一月七日は江戸と平成の現状模写、科学分析を基にした平成の復元模写が展示される。
 初音の調度は、三代将軍徳川家光の長女千代姫が尾張徳川家二代光友に嫁いだ際、御用蒔絵(まきえ)師の幸阿弥(こうあみ)家十代長重(ちょうじゅう)が手掛けた。源氏物語に登場する和歌をモチーフに金や銀、赤珊瑚(さんご)をふんだんに使った絢爛(けんらん)豪華な造りは幕府の権勢を示す「日本一の嫁入り道具」と称される。
 長重は千代姫の婚礼に先立ち、前田家四代光高に嫁いだ将軍家光の養女大姫の婚礼調度も作っており、初音の調度の姉妹作に当たる「菊の白露蒔絵調度」も合わせて出品される。
 津田遠江長光は、かつて織田信長の愛刀で、本能寺の変の後、明智光秀が家臣の津田重久(しげひさ)に与えたとされる。後に前田家に使えた津田が三代利常に贈り、五代綱紀が五代将軍綱吉に献上。さらに尾張徳川家に下賜された因縁がある。
 ほかに石川初公開の前田利長書状は、利長が一五九九(慶長四)年、越後春日山城主の堀秀治に送ったとみられる。金沢から上洛(じょうらく)する途中、家康の兵が通行人を取り調べていることを知らせる内容で、関ケ原の戦いを前にした武将たちの緊張ぶりが浮かぶという。

【上】巻子装に仕立て直された国宝「源氏物語絵巻」東屋(一)、平安時代(12世紀) 【下】国宝 太刀 銘 長光 名物 津田遠江長光、鎌倉時代(13世紀)


▽加賀藩ゆかり 刀や書状も

 担当する歴史博物館学芸員の塩崎久代さんは「徳川の所蔵品は来歴が明らかなものが多く、たどっていくと背後の歴史や尾張と加賀の関係性などが浮かんでくる。御三家筆頭の尾張徳川家に対し、前田家の持ち物はほぼ同ランクにあり、対抗心や文化による戦いが見て取れる」と話す。
 展覧会は石川テレビ放送と開館三十五周年の歴史博物館の主催、北陸中日新聞協力。十一月二十三日まで。十一月一日は展示替えのため休み。

◇10月24日に講演会

 関連イベントとして十月二十四日午後一時半から記念講演会があり、徳川美術館学芸部長代理の吉川美穂さんが「国宝源氏物語絵巻の魅力」と題して話す。定員四十人。聴講無料だが申し込みが必要。問い合わせは歴史博物館=電076(262)3236=へ。

徳川美術館】尾張徳川家に伝えられた大名道具を収蔵・展示する私立美術館で、1935年に開館した。収蔵品は徳川家康をはじめ、歴代当主や家族らの遺品約1万件。国宝9件、重要文化財59件、重要美術品46件など質量ともに大名文化の最高峰とされる。

※お断り=奥能登国際芸術祭の連載は、石川県の新型コロナまん延防止等重点措置期間中、屋内展示の多くが非公開のため休載します。


関連キーワード

PR情報

北陸文化の新着

記事一覧