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わくわく手づくりファーム川北 大高 綾美さん(35) 農家ビール 紡ぐ物語 

2021年9月23日 05時00分 (9月23日 12時14分更新)
「フランスなどへの直接貿易にも力を入れたい」と話す大高綾美さん=石川県川北町で

「フランスなどへの直接貿易にも力を入れたい」と話す大高綾美さん=石川県川北町で


 事務所から一歩出ると、田畑が広がる。国内でも珍しく、地ビールの麦づくりから醸造まで一貫して手掛ける農業法人「わくわく手づくりファーム川北」(石川県川北町)で、営業やマーケティングに励む。「農家がつくるビール」という独自色を打ち出し、新たな顧客を開拓中だ。「やりがいしかない」とほほ笑む。
 畑違いの繊維業界から転身し、二〇二〇年五月に入社した。コロナ禍で外食需要は落ち込み、東京での営業も難しい中、力を入れているのが、企業とのタイアップ商品。JR西日本やセブン−イレブン・ジャパン、食品スーパー「どんたく」(石川県七尾市)と連携し、県産の酒米やイチゴを使ったビールや梨の発泡酒の開発に関わった。
 コロナ禍前は金沢駅や近江町市場などでの観光需要が売り上げの七、八割を占めていた。入社時の売り上げは前年同月比95%減。今年はタイアップ商品を増やす作戦が功を奏し、過去最高の販売額を記録した月もある。
 全国各地の地ビールと差別化するため、日々、農業法人の強みを伝えるブランド戦略を練っている。特色の一つが、大麦を発芽させて麦芽をつくる「製麦(せいばく)」も自社で手掛けていること。日本地ビール協会(兵庫県)によると、国内の醸造所は約五百カ所あるが、製麦をしているのは数カ所だけ。
 原料も珍しい。ビール麦と呼ばれる「二条大麦」ではなく、麦茶に使われる「六条大麦」だ。雨の多い北陸で栽培しやすい一方、醸造には向いていない。試行錯誤し、味わいを高めた。
 自らも「手を動かし、働くのが好き」と語る。埼玉県生まれ。美術大学や服飾の専門学校で学び、繊維業界へ。デザイナーのイメージをくみ取って生地を提案したり、生地の製造現場に具体的に指示したりする役割などを担った。一通りの仕事を経験し、やりきったと感じた。そんな中、繊維の原料は外国産が多いことや、ファストファッションと呼ばれる安価な服の流行も気になり、原料から携われるものづくりがしたいと、食品業界を志した。
 石川県との縁は、金沢大や県内企業によるU・Iターン人材向けの事業によって生まれた。半年間、同大の客員研究員として企業で働く「共創型企業・人材展開プログラム」に参加。一九年秋に来県し、加賀市内のホテルでおみやげの企画に携わった。その後、わくわく手づくりファーム川北の求人に応募した。
 原料から関わる仕事の楽しさを実感し、「自社のブランドを全国区にして、石川県に還元したい」と願っている。 (押川恵理子)

会社メモ 1998年3月、農村地域の活性化を目指し、川北町商工会の有志が設立。休耕田を利用したビール麦や豆類を栽培し、地ビールなどを製造販売する。2017年には農林水産省の「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」の優良事例に選ばれた。大手コンビニとの新たなタイアップ商品も近く発売される。正社員8人、パート・アルバイト5人。本社は川北町橘新イ54の1。


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