少しばかりお客さんを喜ばせて、結局は横綱の強さを見せつけた照ノ富士 実に心憎い【北の富士コラム】
2021年9月18日 05時00分
◇17日 大相撲秋場所6日目(両国国技館)
結びの照ノ富士と若隆景の一番は見応えがあった。
若隆景が低い立ち合いからズブリと2本差しとなった。これは若隆景がうまかったというより、照ノ富士の立ち合いがいつもより高かったからで、珍しいことだ。はっきり言えば立ち合いの失敗だと思う。あまりにもすんなりもろ差しとなってしまったので、若隆景の方もいささか面食らったのではないか。
相撲のうまさでは定評のある若隆景が、懐の深い相手にあれほど深く差すとは思えない。その証拠に照ノ富士にガッチリとカンヌキできめられ、動きたくても動けない。見ている人は照ノ富士がまわしが取れずに苦戦しているように見えただろうが、苦しいのは若隆景の方である。
場内は照ノ富士危うしと見て大騒ぎだったが、照ノ富士は勝利を確信したかのように両腕をきめ上げて豪快にきめ出した。少しばかりお客さんを喜ばせて、結局は横綱の強さを見せつける。実に心憎いくらいの自信にあふれる相撲であった。
それに引き換え大関陣は枕を並べて敗れてしまった。正代は霧馬山に立ち合いに左前みつを取られ、出足を止められてしまった。すでに上体が浮いているので、右上手から引きつけられると、もう何もできずに霧馬山の一気の寄りになすすべなしの状態で土俵を割った。5日目のあの勢いは一体どこにいったのだろうか。まるで別人である。だから信用できないと言ったでしょう。俺の目はごまかせないぞ、正代。
貴景勝もいいところなしの相撲で4敗目となった。負け方が悪過ぎるので、立ち直りは期待する方が無理だろう。体調が良くないのは最初から分かっているが、心の方がすでに折れているのではないか。やはり期待をするとしたら御嶽海しかいないようだ。
若い琴ノ若に対して頭で思い切りぶちかまし、一気に押し出した。この相撲は予想外であった。私は格下の琴ノ若だけに調子を下した相撲を取るかもしれないと見ていたが、まるで横綱戦のような闘志あふれる一番であった。
この調子だと、いよいよ御嶽海は本気で打倒照ノ富士に燃えているようだ。今場所は御嶽海に任せることにしよう。今場所は面白くなるのもならないのも、彼の双肩にかかっている。頼むぞ御嶽海。「燃えよ剣」は司馬遼太郎先生、「燃えよ御嶽海」は私。またしてもつまらんことを言ってしまった。
それでは飯にします。朝から気合を入れて作った麻婆ナスでまずビールでも飲むとします。(元横綱)
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