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移築 事実上の凍結 大野市民俗資料館 柳廼社と交渉まとまらず 

2021年9月15日 05時00分 (9月15日 10時00分更新)

移築計画が事実上の凍結となる大野市民俗資料館 

湧水地散策広場(仮称)整備に計画変更された旧大野簡裁=いずれも大野市城町で


 旧簡裁用地 広場に変更

 大野市の柳廼社(やなぎのやしろ)境内にある市民俗資料館を旧大野簡易裁判所用地に移築する市の計画が暗礁に乗り上げている。資料館地権者の柳廼社側との移築合意交渉が三年余りまとまらず、市は移築を保留とし、簡裁用地に湧水地散策広場(仮称)を整備する計画に変更。関連費を盛り込んだ一般会計補正予算案を開会中の九月定例市議会に提案した。予算案が可決されて新計画が進めば国の許可なく十年間は移築できなくなり、計画は事実上の凍結となる。予算案は十六日に採決される。 (山内道朗)
 旧簡裁は越前大野城を臨む市内観光の拠点に位置し、歴史ある木造建築物の民俗資料館を移築することで、一帯を城下町らしい和の空間にする狙いだった。
 市と市教委は、簡裁の移転先用地取得や、にぎわい創出を目的とした国の補助金を受けるなど、二二年度まで五カ年の整備計画を策定。しかし交渉の難航で二二年度までの移築に見通しが立たず、市は本年度、旧簡裁を解体して用地に隣接する新堀清水と一体的に整備する計画に変更。元計画のまま移築断念すれば国に七千万〜八千万円の補助金返還の必要があったため、国に計画変更の承認を得て九月議会に関連費四千三百九十五万円を提案した。
 移築交渉は一八年三月に市教委が始め、柳廼社側が参道や資料館近くの鳥居の損傷を懸念し、境内に重機を入れないことを主張し難航。柳廼社の交渉窓口を一任された責任役員の男性は「移築話は事前に打診がなく、新聞で知った。市教委はこれまでも自分の都合を言うだけ」と話す。交渉中も境内で測量を始めるなど不信感を深めたという。
 一九年度から市側の交渉役は当時の副市長に交代。市教委は「一〜二カ月に一回ペースで交渉し、工法を提案してきた」と話すが、男性は「来たのは議会の前だけ」と話す。副市長は今年二月に解職。男性が市教委との交渉再開を拒否し、交渉は止まったままだ。
 議会も振り回された。一九年六月議会で資料館移築に関する約五千万円の予算を可決したが、予算未執行で二一年度当初予算案に盛り直す事態になった。二一年三月議会では事業執行の確証がないとして関連費を削除する減額修正案を可決した。
 資料館は老朽化が進んで耐震問題があり、現在地は越前大野城の堀を埋めているため、土壌の問題も抱える。文化財保護の観点から市教委は「計画が白紙になったわけではない。あの場所で改修するか、他の場所に移築するかも含め、今後も交渉していく」と話す。
 今月九日の市議会教育民生常任委では、計画変更の予算案を全会一致で承認。委員からは「計画を切り離したことで、仕切り直しと思って再開する機会にしてほしい」と注文がついた。責任役員の男性は「市教委の姿勢が変わらない限り、協力はできない」と誠意ある行動を求めている。

 大野市民俗資料館移築計画 2010年ごろ、越前大野城周辺の景観改善策として浮上。コンクリート造の旧大野簡裁に代わり、木造の民俗資料館を移築し、周辺の大野藩家老屋敷などと調和の取れた和の空間にする狙いだった。民俗資料館は、1889(明治22)年に大野治安裁判所として建設され、現存する裁判所の木造建築として国内で3番目に古い。市指定文化財。


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