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<by 学生スタッフ> 選挙プランナーに聞く 街が国が 一票で変わる 感覚の近い人探そう

2021年9月15日 05時00分 (9月15日 05時00分更新)
 二〇一六年に改正公職選挙法が施行され、十八、十九歳が選挙権を持ってから四度目の国政選挙となる衆院選が近く行われる。しかし「選挙に行っても何も変わらない」「どこに投票したらいいのか分からない」と考える若い世代も多いのでは。私たちの一票には、どんな意味があるのか。選挙の裏も表も知り尽くす選挙プランナーの松田馨(かおる)さん(41)に、学生スタッフが聞いた。 (文・江尻大雅(たいが)、吉田光里(ひかり)、構成・杉浦正至)

松田馨さん(中央上から2人目)をオンライン取材する学生

 松田さんは「全国に十人いるか、いないか」という選挙プランナー。国や各地方の選挙で立候補者から依頼を受け、選挙のやり方をサポートする。法令順守、スケジュールと予算の管理、PR戦略など仕事は多く、幅広い。
 重要なのは候補者の考えや人となりを有権者にアピールし、他の候補者と差別化すること。若々しさを強調するのか、実績を押し出すのか。時にはポスターやビラのデザイン、スタイリストの手配なども手掛け、「当選確率を1%でも上げる」ことを目指す。

松田馨さん(ダイアログ提供)

 松田さんが初めて選挙に関わったのは〇六年、二十六歳の時。デザインやPRの知識があった縁で、県知事選に初めて出馬した知人女性の選挙を仕切る組織に広報担当として加わった。大学教授だった女性の服装や髪形を変え、お堅いイメージをチェンジ。複数の大政党に推された現職候補を破り、この県初の女性知事誕生を導いた。
 以来、携わった選挙は二百五十回を超える。“勝率”は七割ほど。規模の大きい選挙は多分野のプロとチームを組み、自身は統括役となる場合もある。「候補者は有権者に選んでもらうために涙ぐましい努力をする。支えてくれる家族やスタッフもいる。負けたとしても、何人が投票用紙に自分の名前を書いてくれたかはすごく大事」だという。
 「政治はとっつきにくい」「何を基準に投票したらいいのかが分からない」−。取材班メンバーの疑問に、松田さんは「分からなくても大丈夫。投票に正解はない」ときっぱり。百点満点の候補者は存在しない。いつも投票に行く高齢者が、政策や候補者のことを完璧に理解しているわけでもない。「選挙は自分の代表を選ぶ行為。自分と感覚が近い人や同世代の人、性別が同じ人などを探してみては」
 松田さんによると、日本で一生のうちに投票できる選挙はざっと数えて百四回。「その都度、何を基準に投票したかを覚えておき、自分の納得度が上がるようにアップデート(最適化)していけばいい。ベストではなくてもベターな選択を」と助言してくれた。
 ただ、選挙に関する制度や環境の課題は多いようだ。選挙のルールを定めた公職選挙法ができたのは一九五〇年。大正時代公布の男子普通選挙が下敷きになっていて「設計が古い」。有権者に配るビラや会員制交流サイト(SNS)を使った事前運動などで、制約が多くてややこしい。
 ジェンダー平等の時代にもかかわらず、政治は男性、中高年の世界のまま。女性が性的被害を告発する「#MeToo(ミートゥー)」運動などの動きも起きているが、女性が配偶者や家族から立候補の理解を得られにくいという問題はいまだにある。夫の反対に遭い「離婚して出馬する」ケースも耳にする。そんな状況を変える力も、私たちの一票にはあるのかもしれない。
 二〇一九年に国内で行われた全選挙のうち、一票以内の差で当選、落選が決まったのは二十六回ある。一方、国政選挙の投票率を年代別にみると、十、二十代は三〜四割程度で他の年代よりも低い。一票に泣き笑いする候補者を目の当たりにしてきた松田さん。「どの政治家を選ぶかで国が変わり、街が変わる。絶対に変わる」。その言葉に、取材班一同の背筋が伸びた。

 まつだ・かおる 1980年、広島県出身。京都精華大卒。デザイン会社勤務、大学職員を経て2006年に選挙コンサルティング会社「ダイアログ」を設立し、08年に法人化。現在は東京を拠点に、立候補者を陰で支える選挙プランナーとして地方選挙や国政選挙に携わる。週刊誌などで国政選挙の当落予想も発表している。著書に「残念な政治家を選ばない技術 『選挙リテラシー』入門」など。

 取材した学生スタッフ 新井沙耶香、江尻大雅、岡田彩花、岡庭幸紀(おかにわこうき)、尾崎智隆、久保友悟、坪井佑介、古川穂高、吉田光里(学生スタッフ)、長橋宙夢(ひろむ)、早川里佳(インターン)


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