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【奥能登国際芸術祭2020+】“暮らしの宝” 見せる 作品紹介 <上>

2021年9月11日 05時00分 (9月11日 11時28分更新)

【右】スズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」の中央で展開する映像と光を使った南条嘉毅「余光の海」。音楽は阿部海太郎が担当した=石川県珠洲市の旧西部小学校で 【左】キリコと住民が持ち寄った古着でできたひもで祭りの場を表現した大川友希「待ち合わせの森」


 日本海を見渡せる海辺の高台に立つ廃校になった小学校の体育館が斬新な博物館に生まれ変わった。奥能登国際芸術祭2020+(プラス)の目玉の一つ「スズ・シアター・ミュージアム『光の方舟(はこぶね)』」(石川県珠洲市旧西部小学校体育館)。市内約七十軒の家々から集められた多くの民具と現代アートが融合したユニークな劇場型民俗博物館として期待される。
 博物館中央には珠洲の砂が敷かれ、廃船や漁具、壊れたピアノなどが置かれた。そこに波の映像が映し出される。演出、キュレーションを担当した南条嘉毅は「海に沈んだ百年後をイメージした」という。作曲家阿部海太郎のノスタルジックな音楽と、祭りや波音が重なる。
 そのステージの周辺を取り巻くように明治から昭和にかけて使われた日常生活品や農具、漁具が置かれ、それに触発されたアーティストが市民とともに制作した作品が並ぶ。
 大川友希は、珠洲の祭りで使うキリコの材料と、市民が持ち寄った思い出の古着を裂いたひもをつないだ作品を協働で制作。精緻な蝋型による鋳造で金属作品を制作している久野彩子は古い農具の上に手のひらほどの農民や牛などを乗せた。三宅砂織は木造船の部品に触発された、海と舟の風景をフォトグラムという手法で映像作品にした。

【右】暮らしで使われたさまざまなモノを配置したアートユニット・OBIの「ドリフターズ」(一部) 【中】船小屋に眠っていた木造船の部材や写真を素材に海と船をイメージした三宅砂織の作品 【左】使い古された農具の展示の中に細密な鋳金の造形を配置した久野彩子「静かに佇む」(一部)


 このプロジェクトは、珠洲市内の蔵や倉庫などに眠っていたモノを「大蔵ざらえ」として提供を受け、多くのボランティアの市民が参加した。集まった資料は約千五百点。フィールドワークを通じた作品制作をしてきた三人のユニットOBI(オビ)は、客をもてなす「ヨバレ」の風習で使われた赤御膳(あかごぜん)や食器、古い電化製品、使われなくなった看板などの集積を、食を体感できるインスタレーションとして配置した。
 博物館の機能を果たすことも施設のポイントだ。アドバイザーとして国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)が協力。同館の川辺咲子プロジェクト研究員によると、全国の郷土資料館、歴史資料館などでは、資料の多さに対し人員、予算の不足などから、良好な状態で保存できずに死蔵資料の多さが課題になっている。施設はアートが介在し、地域の人々が参加する新しいタイプの博物館としても期待される。=敬称略
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 能登半島の先端から最先端の美術を発信する「奥能登国際芸術祭2020+」が開幕した。新型コロナウイルスの感染拡大で一年延期、海外作家が来日できずにリモートで作品を制作・展示した。開幕後も屋内作品の公開が延期となったが、十六の国、地域の五十三組のアーティストによる作品は見応え十分。三回にわたり作品を紹介する。

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