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学校主体の防災対策へ避難所運営や教員研修 各教科に取り入れ学習も

2021年9月9日 05時00分 (9月9日 05時00分更新)
新任教員に防災教育のポイントを話す近藤さん(右)=愛知県知立市役所で

新任教員に防災教育のポイントを話す近藤さん(右)=愛知県知立市役所で

  • 新任教員に防災教育のポイントを話す近藤さん(右)=愛知県知立市役所で
  • HUGを実践する生徒ら=知立市の知立南中学校で
 地震や台風などの自然災害が相次ぎ、学校現場の防災対策がますます求められている。子どもへの防災教育、有事の指揮などを担う教員の意識も重要だ。自治体によっては、新任教員の意識改革や学校ごとの避難所計画作りなど、学校主体の防災につながる独自の取り組みが進んでいる。 (北村希)
 八月上旬、愛知県知立市役所。四月から小中学校で勤務する新任教員十八人が集まった。元教員で防災教育アドバイザーの近藤ひろ子さん(70)が講師として招かれ、呼びかけた。「南海トラフ巨大地震の想定では知立市は震度7で死者二百人。最悪の想定で揺れは五分ほど続く」。学校で行う避難訓練は、約一分待機して運動場へ避難する場合が多いといい、「五分ほど身を守り続ける訓練も必要」と勧めた。
 近藤さんによると、学校の避難訓練は五十年以上前からほぼ変わっていない。机など隠れるものがない時、運動場に避難できない時、行方不明者がいる時なども想定し、より実践的に工夫するよう助言した。
 学校現場からは「防災教育をする時間がない」との声がよく聞こえてくる。近藤さんは「カリキュラム作りなど大それたことでなく、国語で防災かるた、家庭科で防災ずきん、社会で防災マップ作りなど、各教科に少しずつ『防災』を振り分ければいい」と助言。教員らは熱心にメモを取った。小中学校の防災倉庫にある簡易トイレや間仕切りを組み立て、避難所運営ゲーム「HUG(ハグ)」も行った。
 知立市は二〇一一年から毎年、新任教員向けの防災研修を行っており、県内でも珍しい。今回参加した鈴木倭音(かずね)さん(24)は「防災ハンドブックの存在や、校区にどんな危険があるか分かっておらず反省した。災害は新任など関係なく一律に起こる。強い意識を持っていたい」と話した。
 災害時、避難所になる可能性が高い小中学校。教員が避難所運営を求められる場合もある。同県豊橋市は一九年から、各学校で避難所の施設利用計画を作成、更新している。教員が中心となり、避難スペース、更衣室、授乳室、使用禁止場所などを決め、学校全体の平面図に示す。
 市職員が西日本豪雨(一八年)の被災地などに派遣された際、避難者が教室を使い、学校が再開できない状況を目の当たりに。計画的な部屋割りが必要と感じ、独自に始めた。学校ごとに利用計画を作るのは全国で珍しく、他市から問い合わせもある。市の担当者は「教員が当事者意識を持てる。今後は計画を地域全体に周知したい」と話す。
 同県西尾市は県内初の取り組みとして一八年から、市の危機管理課防災担当に現役教員を配置。避難計画の更新や備蓄品の保管場所の調整などで各学校との橋渡し役となるほか、学校現場の経験を踏まえた助言をしている。顔なじみの教員が調整役となったことで、市の防災対策について各学校からの理解も得やすくなったという。

遊び感覚で意識高める 避難所運営ゲーム「HUG」

 遊び感覚で防災意識を高める手段として、避難所運営ゲーム「HUG」が全国に広がっている。性別、年齢、家族構成などが書かれたカードを、避難所に見立てた平面図に順に配置していく。一度置いたカードは動かせない。受付をつくる、報道機関が来る、毛布が届くといった「イベントカード」も含まれ、対応しなければいけない。
 七月には知立市の知立南中学校で一年生全員が挑戦。グループに分かれ、学校敷地の平面図も使いながら「小さい子どもがいるから出入り口に近い方がいいんじゃない?」などと進めていた。
 HUGは静岡県が開発し、二〇〇八年に商標登録した。全国の自治体や学校、福祉施設などが同県から購入し、ここ数年も年間約千セットが売れている。最近は新型コロナウイルスの対策を考える必要があるため、内容の改変が相次いでいる。

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