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<by高校生スタッフ> 「当事者意識」で学校変わる 横浜創英中学・高校 工藤勇一校長に聞く

2021年9月8日 05時00分 (9月8日 05時00分更新)
工藤勇一さん

工藤勇一さん

 高校生活の秋は、文化祭や体育祭など行事の多い時期だが、行事の見直しは生徒会活性化の起爆剤になるという。「学校の『当たり前』をやめた。」(時事通信社)の著者で、横浜創英(そうえい)中学・高校(横浜市)の校長工藤勇一さん(61)に、高校生スタッフがオンライン取材すると、「当事者意識」という言葉が繰り返された。それってどういうこと? 高校生スタッフが耳を傾けた。 (構成・福沢英里)
 取材は、生徒会活動にいそしむ高校二年の山地美潤(やまじみうる)さんと早稲田彩乃さんが工藤さんの著書を読んで発案。当日は「学校のみんなに生徒会の一員であるという意識を持ってもらうには」という山地さんの質問から始まった。
 工藤さんが示したのは、日本財団が二〇一九年秋、アジアや欧米九カ国の十七〜十九歳の約九千人を対象に実施した意識調査。「自分で国や社会を変えられると思う」という質問に「はい」と答えた日本の若者は18・3%と最下位だった。
 日本は「おもてなし(を受ける)」の言葉に象徴されるように、「与え続けられる教育。子どもが主体性を失い、当事者意識が低い」と指摘した。うまくいかないと、人のせいにする態度が一例だ。勉強が分からないと「先生の教え方が悪い」。クラスの人間関係がうまくいかないと「担任のせいだ」というふうに。「生徒会は生徒だけの社会なのに、自分たちの社会と思えないのは、先生に依存しているから」と手厳しい。
 どうしたら自律した組織になるのか。起爆剤は文化祭や体育祭などの行事だ。徹底して生徒だけの力で運営してみる。職員会議で教員がつくった計画通り、生徒会が下請けとして運営するのをやめ、自分たちの手で変えていく経験を積むことだという。
 工藤さんが昨年三月まで校長を務めた東京都千代田区立麹町(こうじまち)中では、体育祭で「生徒全員を楽しませる」という使命を生徒会に伝えると、生徒会はクラス対抗の競技をやめた。全校生徒にも意見を聞き、運動の苦手な生徒も楽しめる種目をつくるなど工夫を凝らした。
 大切にしたのが「誰一人置き去りにしない」という考え方。国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)でも重視される。もう一つ、麹町中ではなるべく多数決を使わない。「多数決は少数派の排除になる。ヨーロッパで性的少数者の権利を守ることが当たり前のようにいわれるのは、『自分たちの社会は自分たちのもの』と子どものころから学び、対話してルールを決める営みが当然だから」
 一方、「自分たちで自治を行う日本の仕組みは世界最高レベル」とも。東日本大震災の事例を引き合いに、地域住民が協力して災害を乗り越える組織は他国にはないとし、「当事者意識を高める重要な活動」と紹介した。
 学校教育の目的はこうも述べた。「どんな子どもも、社会に出たときにより良く生きる力を身に付ける場所であってほしい」。経済協力開発機構(OECD)が三〇年に向け、学校教育に必要な姿勢の一つとして掲げたのは「Student(スチューデント) Agency(エージェンシー)」という言葉。工藤さんは日本語で「当事者意識」と当てはめると分かりやすいという。
 一斉休校を経験して学校とは何かを改めて考えたスタッフや、中学校と校風の違う高校へ進学して戸惑うスタッフも。これからの高校生活へヒントをつかんだようだった。
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 くどう・ゆういち 1960年、山形県生まれ。東京理科大理学部卒。山形県や東京都の公立中学教員や新宿区教委教育指導課長などを経て、2014〜20年に千代田区立麹町中学校長。定年退職後の同年4月から現職。共著に「最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方」(SB新書)や、劇作家の鴻上尚史氏との対談を収めた「学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか」(講談社現代新書)。


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