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代表未経験でも…人望と行動力で『ラグビー選手会』新会長に NEC川村慎は『相談員制度』定着目指す

2020年4月28日 23時09分

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2016年8月、選手会の活動で車いすラグビー日本代表の練習を激励訪問。車いすラグビーを体験した川村

2016年8月、選手会の活動で車いすラグビー日本代表の練習を激励訪問。車いすラグビーを体験した川村

  • 2016年8月、選手会の活動で車いすラグビー日本代表の練習を激励訪問。車いすラグビーを体験した川村
  • 機動力あふれるプレーが川村の持ち味だ=2018年12月

就任前に存在感、TL決定に「遺憾の意」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けているスポーツ界に、ユニークな新リーダーが生まれた。日本ラグビー選手会(以下、選手会)の会長に4月に就任したのがNECの川村慎(32)だ。これまで、元東芝の広瀬俊朗さん(38)、前サントリーの畠山健介さん(34)ら日本代表経験者が務めてきた要職に抜てきされた“無印会長”が描く、これからの日本ラグビー界、そしてラグビー選手像は―。
 川村新会長は、副会長だった3月にも存在感を見せた。新型コロナウイルスの感染が拡大し始め各種スポーツイベントが中止・延期となっていたころ、リーグ戦中断中だったトップリーグ(TL)は3月9日、日野に所属する選手の違法薬物使用容疑による逮捕を受け「不祥事続出を受けたコンプライアンス(法令順守)再教育の徹底」を理由にして3節分の中止を決めた。
 この決定に選手会が「遺憾の意」を表明。川村副会長の名で「違法行為に無関係なその他の選手については、通常通りのプレー機会が与えられるべき」「問題再発の責任の大部分を選手が負わされている」などを盛り込んだ声明文を発表した。それを受けて、3月18日に、TLの太田治チェアマンは「(休止判断には)コロナの件もあったことは否めない」と前言を修正した。
 「問題の重大さは承知しています。でも、一部の選手の問題でリーグ全体を休止するのが前例になってはいけないんじゃないか。その違和感は僕だけじゃなく多くの選手から寄せられて、声明文を出しました」と川村。選手会は2016年に誕生、初代の広瀬会長は認知度確立に尽力した。2代目の畠山会長は選手の環境改善に取り組み、移籍時に必要だった前所属チームからの移籍承諾書制度の撤廃という成果を上げた。副会長として2人を支えた川村は3代目。「会長は、日本代表の有名選手がいいと思うんですが…」と苦笑するが人望は厚い。

コロナ禍「これから契約問題が出る可能性」

 選手としては、今季開幕から5試合連続で先発したが、チームは未勝利のままシーズン終了し、総務部に所属する川村は現在テレワーク中だ。「残念だけど誰のせいでもない。今は自宅で8時半から5時まで仕事して、そのあとトレーニングをしています」
 選手会は、コロナ禍にどう向き合うのか。「現時点では、コロナの件で困っているという声は受けていません。給与も影響していない。これは企業スポーツで歴史を築いてきた日本のレガシー。ただ、これから契約に関する問題が出る可能性は認識しています」。休廃部などでプレー機会を失うピンチに見舞われる選手が出る可能性もあり「高卒プロ選手も増えている。ただ、多くのプロ選手には代理人がいる。むしろ社員選手のほうが、難しい立場になっても相談相手がいない、ストレスをため込むリスクがある」と話す。
 そこで検討しているのが、選手のキャリアプランやメンタル面をサポートする相談員を雇用し、各チームに巡回派遣するプログラム。スクールカウンセラーのような立場で、ニュージーランドなど海外チームでは既に導入している。「選手が本音を話せるようにするには、企業側ではなく、選手会が相談員を雇用するのが大事です。選手がストレスなくプレーに打ち込めることはラグビーのレベルアップと日本代表の強化につながる」。海外にならって、日本ラグビー協会がプールしている選手の肖像権使用料を財源とする計画だ。来年度再編される予定の新リーグ準備委員会とも話し合い、前向きな反応ももらっている。
 日本協会との関係も、昨年の森重隆会長就任後はコミュニケーションがより円滑になっている。「僕らは協会と対立したいわけでも、組合的に交渉するわけでもない。お互いを補完して、意見を交わして、いい環境をつくっていきたい」。ポストコロナの新時代に向け、ラグビーの価値、ラグビー選手の価値を高めるのが大目標だ。
▼川村慎(かわむら・しん) 1987(昭和62)年8月6日生まれ、東京都調布市出身の32歳。ポジションはフッカー。172センチ、102キロ。東京・府中ジュニアラグビースクール、慶応高、慶大を経ていったん広告会社に就職。NECに転職してトップリーガーに。2016年日本ラグビー選手会発足時から副会長。20年に会長就任。

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