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”オリパラ”成功したと思いたい人には成功、失敗を主張したい人には失敗 本当の答えが出るのは…

2021年9月6日 10時44分

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パラリンピック閉会式終了後、大型ビジョンに映し出された「ARIGATO」の文字

パラリンピック閉会式終了後、大型ビジョンに映し出された「ARIGATO」の文字

◇ヘンリー鈴木のスポーツ方丈記
 国立競技場の貴賓席に座る菅義偉首相は、5日夜のパラリンピック閉会式で表情を変えることなくグラウンドを見つめているだけだった。あれほどやりたがっていたオリパラなのだから、各国が入場する時くらいは笑顔を浮かべようよ―。実際にはニコニコしながら拍手して選手たちに手を振ることもあったのかもしれないが、少なくとも映像では五輪の時と同様にそのようなシーンしか見られなかった。
 コロナ禍の東京で開催された五輪とパラリンピックが終わった。ネット上などでは「やってよかった」「このような状況で、やはり開催するべきではなかった」「オリパラで使うお金があったら医療従事者や生活困窮者に回すべきだった」などの声があふれている。
 菅首相や小池百合子都知事が「コロナに打ち勝った証(あかし)」と強調した一大イベントが成功だったのか失敗だったのかと問われれば、「成功したと思いたい人には成功だろうし、失敗を主張したい人には失敗」と答えるしかない。開催の裏付けとしていた安全・安心の基準がどこにあるか示されないままだったから、それは当然だ。
 私とすれば、オリパラを通じて選手たちのひた向きさや前向きの思い、この場に立てたことの喜び、仲間やライバルたちとの友情などを見られたことは本当に良かったし、何度も感動させてもらった。ただ、このような選手たちの思いが、言い方は悪いが政局や一部の野心のために利用され、政治が過剰なほどに介入したことは残念だった。
 無観客開催も、同じ時期に人数を制限しながらとはいえプロ野球やサッカーが観客を入れて試合を行っているという矛盾を生んだ。それまで選手を支えてきた家族さえが入場できず、必死に頑張ったわが子を競技場で抱き締めてあげることもできない。パラリンピックに出場した選手の母親が「テレビで応援してあげることしかできない」と、悲しそうにしていたという話も聞いた。
 この1年以上の間に蓄積したデータなどを分析して考えを尽くせば、家族が安全・安心に現地で観戦できる方法はあったのではないか。都合の悪いことは無視したり、データをあえて公表しなかったり、面子や支持率のために行き当たりばったりの方策を繰り返していたとしたら、選手や支えてきた人たちの心をあまりにも踏みにじっている。
 結局、日本には、スポーツが人間にとって必要な文化で、音楽や美術などと同様に社会を変える力を持ち、政治に左右されるものではないという認識がまだ根付いていなかったのかもしれない。2021年がそのような日本を変える契機となれば、今回のオリパラは10年、20年後に初めて「成功だった」と言われるようになるだろうし、今はそう願っている。
 ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長、同論説委員などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまで中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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