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<三河撮りある記>(87) 豊川・ピンク色のハウス

2021年9月5日 05時00分 (9月5日 05時00分更新)

 「あれって何?」
 同僚カメラマンが夜、豊川市赤塚山公園近くを車で走っていた時、ピンク色の光を目にしたことが発端だった。伝え聞いた大体の位置情報を手がかりに、地域に詳しそうな人たちに聞くと、市内在住の大葉農家、井上和英さん(39)が所有するハウスと判明した。
 八月下旬、各地に点在する全十七棟のうち、県道沿いにある二棟を訪ねた。

夕暮れ時、ピンク色に染まる大葉農家の温室=豊川市市田町で

ハウスの上部に設置された発光ダイオード(LED)が、腰の位置あたりまで伸びた大葉の苗を照らしていた。「実はLEDのほとんどは白色。赤色が少し入っているので、両方が合わさってピンクに見える」と井上さん。夏の終わりのこの時季は夜間の三時間ほど点灯しているという。冬場は時間が長くなる。
 東三河は全国有数の大葉産地。井上さんが加入する東三温室園芸農業協同組合(同市下長山町)では、大葉を旬の夏だけでなく年間を通じて出荷するため、一九七〇年代からハウスでの「周年栽培」に取り組んでいる。
 これに欠かせないのが光の照射。大葉は日照時間が短くなると花を咲かせ、葉が硬くなってしまう。そのため、曇天や雨天が続く時季のほか、日照時間が短くなる秋・冬などに光を当て、花芽が付くのを防いでいる。寺部英希組合長は「常に夏と思わせることで、柔らかくおいしい大葉が年中取れるようにしている」と説明した。
 農業用LEDの開発・製造販売などを手掛ける会社「アスター」(東京)によると、赤色の光の波長には花芽を抑制する効果がある。垣田章夫社長は「赤色の光の中では作業しにくいため、白色をバランス良く入れた大葉専用のLEDを作った」と明かす。
 産地では、従来の蛍光灯から消費電力の少ないLEDへの付け替えが進んでいる。ピンク色に彩られたハウスが、東三河の風物詩となる日が来るかもしれない。
  文 ・川合道子
 写真・太田朗子
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