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<美の新星たち> 中谷ミチコさん 平面と立体、曖昧な境界

2021年8月30日 16時00分 (8月30日 16時00分更新)

「痕跡」=2021年


中谷ミチコさん


 絵画は壁に掛けるもの、彫刻は台座に置くもの−。美術におけるジャンルの境界が融解しつつある現代でも、こうした漠然とした先入観は、いまだ私たちを支配しているのだろうか。美術家・中谷ミチコさん(40)による壁に掛かった新作「痕跡」を正面から目にしたとき、多くの人は「透明感のある絵画」という印象をもつはずだ。
 左右に少し動いて眺めると、平面として見えていたイメージが、実は「錯覚」であることに気づく。画面の一部はえぐれ、沈んでいる。奥行きのある凹面に描かれているのは、三人の少女らしき姿。写真のネガフィルムにも通じる色調は、少女たちの実体を反転させたようだ。では、少女たちをかたどった凸面もあるのだろうか。そこにはない彫刻の存在が気になりだす。
 「いわゆる具象彫刻」を制作していた大学時代をへて、卒業後に渡独。当初は「粘土の場所をドイツ語で聞けなかった」ため、現地の大学では彫刻ではなく、少女などを題材にドローイング(素描)をひたすら繰り返した。
 その経験が大きな財産になる。「彫刻は重さや空間など、いわば物理的な条件との闘い。素描から彫刻にすると、消えてしまったり変化したりするものがどうしてもあること...

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