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<ユースク> ドリフト族根絶、道半ば 名古屋港飛島、弥富ふ頭

2021年8月30日 05時00分 (9月27日 10時07分更新)

 自宅がある愛知県蟹江町の県道西尾張中央道から夜間に聞こえる、改造した車などの激しい騒音が長年の悩みの種です。その一部は名古屋港飛島ふ頭(同県飛島村)などで、夜な夜な暴走を繰り返す「ドリフト族」とみられ、現場に至る道の周辺住民を代表して、何とかならないかお願いしたいです。(蟹江町、男性)

 私が勤務する中日新聞蟹江通信部の建物でも、車の大きなエンジン音などの騒音を聞くことが多く、以前から気になっていました。そこに、ドリフト族と呼ばれる若者たちが関係していたとは。危険な行為の排除に、なぜこれほど時間がかかっているのでしょうか。警察、道路管理者に取材し、騒音の主にも直接、話を聞いてみることにしました。
 (伊勢村優樹)

耳つんざく騒音

白煙を上げながらドリフトする車=名古屋港弥富ふ頭で

 乗用車が猛スピードで向かってくると、目の前の交差点で後輪を滑らせて方向を急転換した。平日の夜は静かな名古屋港飛島、弥富両ふ頭。週末のこの日、「キュー」という耳をつんざくスリップ音が響いた。
 8日未明、飛島村や愛知県弥富市南部の臨海工業地帯にある道路。「ドリフト族」と呼ばれる若者や外国人らが、派手な運転ぶりを競い合っていた。
 この日は午前1時ごろから未明にかけて車両が集結し、最も多い時間帯には30台近くに。歩道などに見物人の人だかりができる中、うち数台が、代わる代わるに暴走を繰り返した。

車体を滑らせながら交差点に突っ込むドリフト車=名古屋港弥富ふ頭で

 ドリフト走行した後に、車の助手席から降りてきた男性は「すごく高揚感がある」と笑った。だが、取材中には、見物人やガードレールに車両が急接近することも。一歩間違えれば命の危険がある、と実感した。

暴走 25年前から

 こうした暴走行為は今に始まったことではない。
 一帯は運送会社や倉庫、工場が集積。大型のトラックやトレーラーが走りやすいよう片側3車線の道路が真っすぐ続く区間が多く、交差点は広い。昼は車両が頻繁に行き交うが、夜になるとほとんど姿がなくなるのも特徴だ。こうした状況に目を付け、25年近く前からドリフト族がやってくるようになったという。
 管轄する蟹江署の担当者は「過去には見物客に衝突した死傷事故があった」と危険性を指摘。車が海に転落した例もあったという。
 道路管理者の名古屋港管理組合によると、最近では暴走が原因とみられるガードレールの破損や、摩耗したタイヤを捨てていく例があった。担当者は「重大事故につながる恐れもあり、許容できない」と憤る。

タイヤ跡が黒い弧を描くように幾重にも残るドリフト現場=愛知県飛島村東浜で

 県警は、道交法違反容疑などで摘発を強化してきた。時にはふ頭からの出口を一斉に封鎖し、違法改造がないか車を1台ずつ検査。夜間の通行を関係車両だけに規制したり、約2メートル四方のコンクリート壁4基で道路をふさいだり。あの手この手で排除に努めてきた。

排除へ 道路改良

 また、管理組合と連携し、ドリフト走行しにくいよう道路を改良。2001年には路面に溝を刻んでタイヤを滑りにくくさせた。その後、段階的に各所の交差点などに道路びょうやポストコーンを設置した。
 さらに、ドリフト族が集まっていた現場近くのコンビニには協力を依頼した。12年から、土曜の夜間営業を自粛してもらい、閉店中は店の駐車場に入れないように柵を設けている。
 こうした対策後は、ドリフト族関連の110番は激減。暴走ができる場所が少なくなったことなどで、ドリフト族はかつてと比べると減ったとみられる。
 だが、根絶には至っていない。蟹江署によると、今も数十台が集まり、定期的にふ頭の3カ所でドリフト走行を繰り返す。港湾で働く人々から、騒音などについて多い日で5件ほどの苦情が寄せられるという。
 通報が入るたび、署員は現場へ急行する。しかし、ドリフト族はパトカーを見ると、クモの子を散らすように逃走。署員が現場を引き揚げれば、再び暴走車が集まってくるといういたちごっこが続いている。
 同署の大村真也交通課長は「高速度で逃げる。安全に停止させ相手もけがしないように捕まえるのはなかなか困難」と説明する。

飛島村でドリフト族が集まる交差点。黒いタイヤ痕が衛星写真からでもはっきり分かる=グーグルマップ

 加えて、近年はドリフト族の偵察隊が会員制交流サイト(SNS)を使い、ふ頭内の警察の動きなどの情報を瞬時に共有しているとみられる。現認がより困難になっただけではない。ある場所であたかもドリフト走行が行われているかのような偽情報を110番で伝え、署員を振り回すなど巧妙化しているという。
 そもそもふ頭は関係者以外は立ち入り禁止だ。しかし、一般道路と外観上の区別がつきにくく、故意に入り込んだ車両でも、積極的に取り締まるのも難しい側面がある、と大村課長。
 一般道路から飛島ふ頭に渡る二つの入り口のうち、名港管理組合が週末に閉鎖するのは一つ。担当者は「港湾活動は24時間行われていることから二つは閉じられない」と明かす。

「悪い認識ある」

 ドリフト族自身は、どう考えているのか。1人の若い男性に話を聞くと「危ないし、悪いと分かっている」と返答があった。それでもここで車を走らせるのは「サーキットは金がかかる」からという。
 幼い頃から父親に連れられてきていたという男性は「パトカーがいないとスリルが出ない」とも語った。
 「眠っていた子が起きるうるささ」「ストレスなく穏やかに暮らしたい」−。そう訴え、排除を願う周辺住民との隔たりは大きい。
 四半世紀を経て、いまだ道半ばと言える対策。名港管理組合の担当者は「港湾物流を円滑に行うために整備された道路なのに、ドリフト対策を進めることで、その目的が損なわれるのは本末転倒になる。両立に苦心しているが、今後も対策していく」と強調する。
 蟹江署の大村課長は「ドリフト族が何百台と集まった昔を思えばだいぶおとなしくなったが、誰も走らなくなるのが究極の目標。摘発していくことで『ここを走ると捕まるぞ』という認識を広めたい」と語った。
 今回紹介した内容は、30日午後4時49分から放送の東海テレビ「ニュースOne」でも報道されます。番組を視聴できない地域の皆さんは同日午後8時以降、番組ホームページの特設コーナーで関連動画をご覧いただけます。  


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