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平地794勝、障害253勝…53歳の二刀流・熊沢重文とはどんな男…あと1勝障害の歴代最多勝に挑む【競馬の話をしよう。】

2021年8月28日 06時00分

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熊沢重文騎手

熊沢重文騎手

 競馬の世界を掘り下げる新企画「競馬の話をしよう。」。第8回は障害競走歴代最多勝記録(254勝)まであと1勝に迫っている熊沢重文騎手(53)=栗東・フリー=を直撃。愛知県刈谷市出身の大ベテランに小倉サマージャンプでコンビを組むアサクサゲンキはもちろん、障害レースの魅力などを聞いた。(聞き手・関俊彦)
 ―小倉サマージャンプではオープンクラスで2連勝中のアサクサゲンキに騎乗する。直前の気配は
 熊沢「使って調子を落とす馬でもないから。休み明けだった前走も調子は良かったけど、今回も最終追い切りは馬なりで良い動きだったし、良い状態をキープしている。だんだん飛越も安定してきて障害馬らしくなってきたね」
 ―同馬の長所は
 「やっぱり飛越が上手でスピードが落ちないところ。レースを使われてスタミナもついてきているし、平地を走る力は当然いいものを持っている。往々にして平地力がありすぎて悪い方に出てしまう馬もいるけど、この馬は良い方に向いている。小倉は平地でも重賞(小倉2歳S)を勝っているからね。相性も良いし、縁があるんだと思う」
 ―熊沢騎手にとっては、星野忍さん(元騎手、元調教師)が持っている障害歴代最多勝記録がかかるレースになる
 「その辺りは積み重ねだからね。記録は記録なんだろうけど、頑張っていれば到達するのかなという気持ち。周りから言われるから意識はするけど、競馬に行ってどうこうということはない。いつも通りの仕事をすることに変わりないよ」
 ―柴田善騎手がレパードSでJRA最年長重賞V記録を塗り替えるなど今年はベテラン勢の活躍が目立つ
 「すごいよね。僕より年上は小牧さんもいるけど、競馬学校出身では(柴田善が)唯一の先輩なんで励みにもなる。僕も自分なりに体は動くし、気力もある。この世界に生きている人間で負けたいなんて思う人間はいないし、その気持ちがないとやっていられない。現状に満足したり、もういいやって諦めていては進歩はない。年はとっても、その気持ちはデビュー以来変わってないよ」
 ―障害競走にはデビュー2年目から騎乗を続けている。3年目にオークス(コスモドリーム)を勝つなど平地でも結果を残した後も障害に乗り続けるのは少し珍しいケースでは
 「(内藤繁春)師匠からデビューからしばらくは(障害競走に)乗るなと言われていたんだけど、2年目にたまたま乗る機会があって乗せてもらってね。その後から、馬を(障害馬として)一からつくっていくところが平地とはひと味違って楽しいと思って。以前は平地が全然ダメだった馬が障害に回ってくるパターンが多かったけど、今はオープン馬も障害におろしてくれたりするから、ますます楽しくなってきている」
 ―デビューから思い出に残っているレースは
 「やっぱり初勝利(1986年ジュニヤーダイオー)は忘れられない。もちろんG1を勝たせてもらったレースも全部覚えている。ダイユウサク(91年有馬記念)の感覚は今でも残っているね。4コーナーでの手応えがあって、なんとか勝負になるかもという感じ。ただ相手は(メジロ)マックイーン。まさか届くとはという感じだったよ」
 ―現在、53歳。第一線で活躍できる秘けつは
 「特にこれと言ったことは…(笑)。週1でトレーナーをつけているけど、そんながっつりやるわけじゃないし、キープする程度のトレーニングしかしてないよ。それよりも毎週、多くの馬にまたがっているけど、馬乗りとしてはそれが一番のトレーニングだよね」
 ―ちまたではレジェンドと呼ばれることも
 「そんなすごいものじゃないよ(笑)。まだまだ勉強することがいっぱいある。今でもある程度怖さもあるしね。だけど怖さというのも一つ持っとくことが大事だと思ってる。何も怖くないようじゃ本当に危ないし、怖いからこそどうしたらうまいこと乗れるかと考えるからね」
 ―最後に改めて障害競走の魅力とは
 「やっぱり自分で一から障害馬としてつくっていくところかな。それぞれの馬のポテンシャルもあるけど、僕らの腕が反映されてくる。もちろんみんな良い馬に育ってほしいと思っている。でも優等生だから走るというわけでもないし、苦労したからダメというわけでもない。マーベラスカイザーのように、もともと能力が高くて教えることがないぐらいの馬もいる。障害馬を作ることに方程式はないんだなとつくづく思っている。でも、そこが楽しいんだよね」
▼熊沢重文(くまざわ・しげふみ)1968年1月25日生まれ、愛知県刈谷市出身の53歳。中学時代に同郷で元騎手の南井克巳・現調教師と知り合い、中学卒業後に競馬学校に入学。86年にデビュー。同期は横山典弘や松永幹夫・現調教師。G1初騎乗となった88年オークスを10番人気のコスモドリームで制し、G1初勝利(重賞も初V)。91年の有馬記念では15頭立てでブービー人気だったダイユウサクで勝ち、世間を驚かせた。2005年阪神JFをテイエムプリキュアで制し、G13勝目。J・G1も12年中山大障害をマーベラスカイザーで制した。JRA通算1047勝(うち障害競走は253勝)で重賞は34勝。オルフェーヴルやゴールドシップの父ステイゴールドの主戦も務めた。
▼障害競走 日本では江戸時代末期、横浜の居留地競馬で障害競走も行われたという説もあるが、正式な記録としては、日本初の競馬に関する閣令「競馬規定」が発布された1908年が最も古く、競走の種類の中に、平地競走と同様に障害競走についても記されている。当初は現在の札幌競馬場で実施されていたが、1910年代からほかの競馬場にも広がり始め、1934年には中山競馬場に大規模な障害コースが完成。現在まで続く中山大障害が創設された。
 世界では、1752年にアイルランドで実施された記録が最古のものと知られている。1836年にはイギリスで約7キロの距離で争われるグランドナショナルが創設され、現在も世界一過酷な障害レースとして続いている。

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