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学術会議問題 任命拒否文書開示せよ

2021年8月25日 05時00分 (8月25日 05時00分更新)
 日本学術会議の会員への任命を菅義偉首相に拒否された学者らが行政不服審査法により、政府に審査請求をした。拒否の理由を示した文書は本来、あるはずだ。開示に向けた速やかな対応を望む。
 学術会議の会員は法律で独立性を保障され、首相は推薦に基づき任命するにすぎない。だが昨年十月、形式だったはずの任命権を首相が持ち出し、六人の学者の任命を拒否。露骨な介入をした。
 憲法では「学問の自由」が保障されている。単純に「研究をする自由」ではなく、研究者の身分保障や政治的干渉からの保護などを定めた規定だ。それゆえ憲法学者などからも強い批判が起きた。
 六人の任命拒否には何か特別な理由があるはずである。なのに首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的観点からの判断」などとあいまいな説明に終始し、明確な根拠が示されないまま今日に至っている。
 もっとも昨年十二月に国会審議の過程で杉田和博官房副長官と内閣府のやりとりを示す文書の一部が出された。「外すべき者(副長官から)」と書かれた文書だったが、それ以外は黒塗りで、理由も示されていなかった。
 当事者の六人らは今春、任命拒否の根拠や経緯が分かる文書などを開示するよう内閣官房や内閣府に求めた。だが、「不開示」や「文書不存在」の通知を受けた。そのため、今回、行政不服審査法に基づいて審査請求をした。
 今後は総務省の情報公開・個人情報保護審査会で、不開示決定の是非について審査が行われる。開示を求めているのは当事者なので、個人情報保護にも該当せず、開示すべき文書に当たろう。
 政府が文書を隠蔽(いんぺい)している可能性さえある。元裁判官や元検察官が入る同審査会は公正な目で判断し、早く結論を出してほしい。
 そもそも憲法上も疑義が持たれる決定で、その根拠となる文書を示さないことは、民主主義や法治国家の原則にも反する。それほどの重大事だ。
 本来ならば首相が進んで説明すべきだ。理由を言えないなら前例のない任命拒否をすべきでなかった。撤回すべきである。
 六人の中には安保法制などに反対した人もいる。仮に反政府的な言論が拒否理由ならば、戦前の思想警察さえ想起させる。言論封殺につながりかねず、到底うやむやにしてはいけない。

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