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[朝乃山大関昇進へ:中]2人の亡き恩師に伝えたい「もう1つ上の番付があるので…頑張ります」

2020年3月25日 00時32分

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春場所前、近大で稽古して伊東監督の遺影を手に記念撮影する朝乃山

春場所前、近大で稽古して伊東監督の遺影を手に記念撮影する朝乃山

 大相撲春場所で11勝を挙げ、東関脇朝乃山(26)=高砂=が25日、日本相撲協会の夏場所番付編成会議と臨時理事会を経て、正式に大関に昇進する。富山県出身では元横綱の太刀山以来、111年ぶりの新大関と歴史を動かした伸び盛りの原点や魅力を、両親と恩師の証言や本人の振り返りから、しこ名に込められた思いとともに3回の連載で迫る。
 未来の大関は、校庭の片隅でうなだれていた。富山市呉羽中へ入学した当初は、相撲と両立していたハンドボールに打ち込んだが「走るのが苦手すぎたっす」と、ランニングで周回遅れになってトボトボ。現在も相撲部を指導する杉林雅章教諭(43)に「相撲なら走らんでもいい。いろいろな大会に出て、おいしいものもいっぱい食べられるよ」と誘われ、1カ月で土俵に戻ってきた。
 以降は相撲一筋。それでも、順風満帆とはいかなかった。中3で念願の全国大会出場を決めたが大会前に左肘を脱臼骨折。本番は土俵に上がれず、ギプスをしたままの記念撮影だけで終わった。「もういいかな」という失意の中、同じ呉羽地区出身の指導者が心に火を付けてくれた。
 富山商高相撲部で、右四つの攻めをたたき込んでくれた浦山英樹監督だ。2017年の初場所中、関取の座を射止めた幕下優勝を見届け40歳で世を去った恩師にあやかり、新十両昇進を機にしこ名を本名から朝乃山英樹に改めた。「山」だけでなく、下の名前も受け継いだ。朝乃山たっての希望だった。
 猛稽古の日々で、褒められた記憶は高3で準優勝した大会での1度きり。食事中も猫背を注意されるかと思いきや「相撲を取るときも、そういう角度でせい」と大声が飛んできた。上体が反る立ち合いの欠点も、お見通し。まさに相撲漬けの日々だった。
 父・石橋靖さん(62)も母・佳美さん(57)も「人の縁に恵まれた子」と振り返るように、同高から近大に進んで浦山監督の後輩に。元アマチュア横綱の伊東勝人監督から、朝乃山いわく「愛のあるネチネチした指導」で右四つを磨き、一発勝負の心構えを学び、角界へ飛び込んだ。
 伊東監督が今年の初場所中に55歳で急逝。一発回答の大関とり成就が手向けになった。だが、立ち止まるつもりはない。亡くなる1カ月前に「好きな未完の素材」とさらなる進化を予言していた。さらに、浦山監督が病床で震える手で書いた手紙には「横綱になれるのは一握り。お前にはその無限の可能性がある」。熱い思いを託された。
 「もう1つ上の番付があるので、そこを目標にして頑張りますと伝えたい」と朝乃山。2人の亡き恩師へ、恩返しはまだまだ終わらない。

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