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五輪候補を数多く抱えるサンフレッチェならではの悩み クラブあっての五輪…城福監督「順番を間違えさせないようにするのは大事な仕事」[開幕直前インタビュー]

2020年2月18日 22時45分

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FCソウルの崔竜洙監督(左)と談笑する城福監督

FCソウルの崔竜洙監督(左)と談笑する城福監督

  • FCソウルの崔竜洙監督(左)と談笑する城福監督
  • 練習試合の戦況を見守る城福監督
 サッカーJ1の広島を率いる城福浩監督(58)は、就任3年目の今季を「タイトルイヤー」と位置付けている。一昨季は低迷していたチームを鮮やかに立て直し、昨季は若手の積極登用による世代交代にも成功。指揮官の情熱、反骨心はなお燃え盛り、「いま、心の底からこのクラブの選手たちとタイトルを取りたいと思っている」。本紙のロングインタビューで、今季に懸ける思い、チームづくり、監督業について熱っぽく語った。(取材・構成=松岡祐司)

  ◇  ◇

 ―2019年シーズンはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で16強入り、リーグ戦では優勝争いの末に6位でした。その戦いぶりをどのように評価、分析していますか?
 城福監督「2019年を単年で考えるというより、僕の中では2018年からつながっているという思いが大きくあります。いつもいろんなところで言っているんだけど、2018年は『最も称賛されない2位』だったんです。ただ、僕らからすると勝ち取ったんですよ。あの戦い抜いた2位があって、ACLの出場権を勝ち取ったんです。2018年12月のリーグ最終節のスタメンと比べて、その2カ月後のACLプレーオフのスタメンの平均年齢はおそらく5歳くらい若返っているんです。年間を通して、2018年から大きく人が入れ替わったことは事実です。これは苦しみながら2位を勝ち取って、それによって勝ち得たACLの権利を育成でうまく使えたということがあります」
 「でも、当時、初戦のアウェー・広州恒大(中国)戦に0ー2で負けて、リーグ戦と全然メンバー(若手主体)が違うということで、海外メディアだけじゃなく、日本のメディアからも総バッシングを食らって、『こんなにバッシングされるのか』というところから僕らはスタートしました。ACLはリーグ戦とは違うメンバーでほとんど戦い抜いて、グループステージを勝ち上がったことが、特に若手の成長にはすごく大きなものになりました。その自信がチームを後押ししてくれたし、そこで活躍した選手がリーグ戦にも絡んでいったという意味で、僕らは2018年からつながっているんです。そこから2019年の1年間、若返りを図れたということになるんだと思います」
 ―堅守速攻からパスをつないで崩すというスタイルに大きく変化した印象があります。同時に、大胆な世代交代に舵(かじ)を切った理由を教えてください。

 「2018年の第33節までは『4ー4ー2』で、同年の第34節、2019年から『3ー4ー3』にしたということと、ボールをつなぐことを志向していた攻撃のスタイルをもっと前面に押し出すようにしたのは2019年からで、システムの変更と、スタイルの変更にトライしました。もうひとつはメンバーの若返りです。この3つを残留争いに巻き込まれることなくやり切りたかったんです。それは相当なリスクと覚悟がいって、なぜかと言えば、過去のJリーグを見たら、10年来同じメンバーでやってきて、いろんなものを変えようとした時にどれだけ苦しむかは他のクラブを見れば火を見るより明らかで、そこにチャレンジした1年だったと思います。なぜ、そのリスクを冒してチャレンジしたかというと、苦しみ抜いてみんなで勝ち取った2018年の2位だったけれど、先発平均が31歳近くだった。われわれは(クラブの事業規模が)35億円前後。10年前はトップが50億円だったが、いまはJ1の平均が50億円を超えている。サッカーという産業の図式が変わってきているんです。ここで『われわれは予算が足りない』ということを言いたいのではなく、その状況でどうやって勝つかといえば、選手を成長させるしかないんですよ。広島の過去の歴史をひもとくと、森崎兄弟、駒野、槙野、青山を使って、その中でJ2に落ちて、それでも彼らを育てて、その後には彼らが栄冠を勝ち取るわけですよね。ましてや、格差が広がったこの時代に、われわれが何をやってもう1度、頂点を目指すかと言ったら、他のクラブとJ1で実績のある選手を取り合ってチームを作ることではないのは明らかです。でも、(2017年は)15位だったから、残留争いには巻き込まれたくない。現実的な戦いをした結果、(2018年は)2位になれました。ここから先、このクラブらしさでタイトルを目指すということを考えたら、若返りを図ることしか僕の中では方法がなかった。だからこそ、リスクを承知でそこにトライした。その1年だったということです」
 ―パスサッカーというスタイルへの変更は、広島というクラブが培ってきた「DNA」と城福監督の志向が一致したということですか?
 「まさにその通りで、2018年はやりたくないことをやったというわけじゃなくて、勝ち点を取るために現実的なところから逆算したのがFWパトリック(現G大阪)だった。(パトリックを最大限に活用して)開幕15試合でJリーグ最多勝ち点を獲得してしまったんですよ。そうしたら、(スタイルを)変えられなかったんですよ。変えると、そこに戻りたがる選手たちがいたし、勝ち点を取れていたので(変える必要性もなかった)。だけども、本来、広島が持っているDNA、広島が目指しているものと、自分がやりたいものはやっぱりもっとボールをつなぎたい、と。人が多く関わっていくサッカーを自分も志向してきたし、それが可能だと思ったし、その方が選手も躍動すると思いました。そういうのが全て合わさったんです」
 ―昨季は23歳のDF荒木隼人、22歳のMF森島司、20歳のGK大迫敬介が台頭し、主軸となりました。若い選手がポジションを奪うことは、チームにとって大きなエネルギーになりますか?
 「全員が歯を食いしばり、頑張って声を掛け合いながらトレーニングしているので、僕はフェアに見てあげないといけないし、フェアに見たいと思う。ただ、やっぱり若い選手は回復力も早ければ、1つのしびれる経験が血となり肉となるので、フレッシュな選手が出てきて成長していく姿を目の当たりにすると、それはチームとしての大きな底上げになると同時に、『おれも行くんだ』『置いてけぼりにはならないぞ』といい刺激が入ると思う。実績十分の選手が活躍したら、『やっぱりな』で終わるんですけど、まだ実績のない選手が新たなポジションを取りにいきつつある時は周りがいろんなものを感じ、刺激になると思います。一方で、周りはすごくもてはやすんですよ、若いから。僕からすると、みんなが歯を食いしばってやっている中で、若い選手が(試合に)出ていくということは、(試合に)出て行けない選手が出てくるわけです。そこはちゃんと見ながら、チームを作っていかないといけないと思います」
 ―昨季までの土台、ベースに今季はどんな上積みを図ろうと考えていますか?
 「大きなクラブから選手を引き抜かれるということが今回は最小限で、レギュラーでは1人(稲垣祥→名古屋)だけだった。それは広島というクラブの強化を考えたらミニマムな数字で、今まで積み上げてきたものを開幕から継続できる陣容だということです。外国人選手もほとんど入れ替わらなかったということも含めて、積み上げてきたものを開幕から発揮できるというアドバンテージがあると思います。積み上げてきたものとプラスアルファを目指せる状況になっていると思います。一方で、僕は(選手の引き抜きが)ゼロじゃなくて良かったとも思います。ある意味、このクラブらしい。1人、2人は大きいクラブへ(移籍する)というのがあっても、そこに選手がちゃんと育っていくということも見せたいと思っています」
 ―選手の見極めや、チームづくりの過程で監督として譲らない、譲れない部分はやはり変わっていませんか?
 「万人にとってフェアというようなものは世の中に存在しないと思うんです。自分の中で、選手に求めているもの、チームに求めているものの軸をぶらさないフェアさは最も大事にしてます。年齢に関係なく練習メニューは全部同じです。だからこそ、そこでやり切った選手は年齢に関係なくピックアップしていく。例えば、『ベテランなんで、ここは別メニューで』ということを練習でやって、(試合で起用して)『公平にジャッジしました』と言っても、誰も納得しないですよね。結果的にチョイスしたのが若手だろうがベテランだろうが、基本的には問題を抱えていない限り、トレーニングの強度は全員同じで、その中でやれている選手を使う。それは外国人選手も同じで、自分が見て(練習で)やれている選手を使うという軸だけは外さないようにしています」
 ―Uー17日本代表、FC東京を指揮した時代から、監督としての信念や考えなどで変わったこと、変わらないものはありますか?
 「監督業で言えば、僕はJ1で1番上の年齢になって3年くらいになるんですけど、選手はゆとり世代がメインとなって、サッカーも移り変わっていくわけですよ。『昔はこうだった』と言うのはNGワードで、自分自身が変わらなきゃいけないものがあるんですよね。今のサッカーの変化、そのトレンドを理解して、自分を変えていかないといけないところがあるのと、もうひとつは変わらないものがあるんですよ。その両面を持ち続けないと監督業はやれないなと思っています。常に変化しなきゃいけないものと、変わらないもの。抽象的にしか言えないですけど、そういうものが絶対にあります。監督業は何年やっても全部、新しい景色なんですよ。新しい景色を見て、勉強して、積み上げていく。シチュエーションが経験になるという意味では、やっぱり監督をやらないとだめだなと思いました。外から見ても何も勉強にはならない。泥水を飲む経験にしても、荷物を運んで手首を捻挫するような経験をしても、いろんな規模のクラブ、いろんなシチュエーションを経験しないと積み上がらないなといくつになっても思います。もちろん(監督業から)離れたなりの視点はありますけど、チームのインサイドで泥水を飲むことが大事だなと思います。もちろん、泥水ばっかりじゃないですけどね(笑い)」

 ―今季は東京五輪イヤーです。チームには五輪世代の選手を数多く抱えています。

 「過去に五輪選手を抱えてきた経験でいくと、(選手のマネジメントなどが)実は非常に難しいんですよ。特に東京五輪なので、今回は特別かもしれないですけど、五輪への注目度やメディアの数とか全然違うじゃないですか。そうすると、選手は頭がそっちに行ってしまう。五輪に選ばれたい、五輪に選ばれるためにどうするかという思考が(生まれてしまう)。自分らしく戦って、成長して、クラブで勝利に貢献してはじめて五輪に選ばれるという思考より、五輪に選ばれるためにはもっとこうしなければ―、と。それは選手の意欲として大事なことなんですけど、そういう葛藤に巻き込まれがちなのが五輪選手なんです。五輪に選ばれたいと思うことは大事なことですけど、順番を間違えさせないようにするのは大事な仕事なのかなと思います。しっかりやれていればおのずと選ばれるでしょうし、順番を間違えればそうじゃないだろうし。そういうところは自分は経験則で分かっているので、しっかり彼らにアプローチしていきたいです。彼らが日の丸を背負い、国歌を歌い、五輪で戦うという経験ができるのであれば、こんなにうれしいことはないです。彼らの成長にとっては、それが大きなきっかけになるかなと思います」

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