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「私の仕事は騎手にいい馬を乗せることではありません」エージェントの言葉に膝を打った【本城雅人コラム】

2021年8月16日 07時53分

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蛯名正義騎手

蛯名正義騎手

 JRAでは現在、ジョッキーの騎乗依頼を手伝う「騎乗依頼仲介者」を公表している。いわゆる「エージェント」と呼ばれる人たちで、競馬専門紙記者が多いが、最近は専業にしている人も増えてきた。これが制度化されたのは2006年からだが、競馬界には1980年代後半くらいからあった。関東では岡部幸雄さん、関西では武豊騎手など、厩舎に所属しないフリージョッキーの多くが頼っていた。馬主や厩舎と直接契約する欧州とは異なり、ジョッキー個人で乗り馬を決める米国が発祥で、米国では引退したジョッキーのセカンドキャリアにもなっている。
 このエージェントの仕事、私は強そうな馬がいたら「次はうちのジョッキーをお願いします」と声をかけたり「〇〇レースが空いてます」と騎手に代わって厩舎に頼む、また厩舎からの依頼の窓口になることだと思っていた。そのことは大きく間違ってはいないが、根本は異なる。それは米国でマイク・スミスや蛯名正義騎手(現調教師)のエージェントをしていたスティーブ・アディカさんにこう言われたからだ。
 「私の仕事はジョッキーにいい馬を乗せることではありません。勝つ馬に乗せること。最高のハンデキャッパーになることです」
 つまり人気などどうでもいい。前評判は低くても勝つ馬。的を射た表現だと膝を打った。
 言われてみれば日本でも、あるジョッキーが急に勝ち始めた時、競馬記者から「エージェントが〇〇さんに代わったからですよ」と言われた。騎手依頼仲介者はあくまでも裏方であり、騎手をサポートする役目。だが普段よりも多く、人気薄がやってくるこの夏競馬、終わってびっくりの大番狂わせが起きた時は、騎手の「腕」をたたえることはもちろんだが、その馬を見出したエージェントの「目」にも一目置きたい。(作家)

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