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自然の呼吸 閉じ込める 「富山ガラス大賞展2021」で大賞 金沢市の佐々木類さん

2021年8月14日 05時00分 (8月14日 13時48分更新)

大賞作品の「植物の記憶/Subtle Intimacy」

はかなくも、不変なものを「保存」

 富山市ガラス美術館などが主催する国際公募展「富山ガラス大賞展2021」で、金沢市の佐々木類さん(37)=高知県生まれ=が大賞を受賞した。受賞作「植物の記憶/Subtle Intimacy」は、訪れた場所で採集した植物を板ガラスに挟んで焼成する手法で制作しているシリーズ。探求しているのは自身が感じた「かすかな懐かしさ」だという。(松岡等)
 ガラスの内部で植物は灰となり、組み込まれた発光ダイオード(LED)の照明で、葉脈や茎や根の筋が浮かび上がる。ガラスの中には植物が発する泡や水分も保存される。標本やエックス線写真を思わせるが、佐々木さんの記憶を遠い未来の誰かに伝える「タイムカプセルのようなもの」でもある。
 佐々木さんは武蔵野美術大造形学部工芸工業デザイン学科ガラスコース卒、米ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン大大学院ガラス科修士課程修了。二〇一三〜一六年に富山ガラス造形研究所で助手、一七年から金沢卯辰山工芸工房で専門員を務める。

受賞作の前に立つ佐々木類さん=富山市ガラス美術館で

 五年を過ごした米国からの帰国後に、母国になじめない「リバースカルチャーショック」と呼ばれる違和感が現在の作品づくりの契機になった。「そんな時であっても懐かしさやいとおしさがあった。それをガラスに保存したいと思った」
 制作で大切にしているというのがフランスの作家サンテグジュペリの「星の王子さま」の「『大切なことは目に見えない』」という有名な一節。「幼少期に親しんだ土地の空気、湿気や雨が泡の状態になることで、肉眼では見えなかったものが見えてくる。タンポポの綿毛や吸い上げた雨粒や空気。それははかなくも、不変なものとして保存できる」
 一三年の瀬戸内国際芸術祭では、粟島(香川県)に滞在し、島の人々と協働で採集した植物をガラスに閉じ込め、会場となった民家の四畳半ほどの部屋を覆う作品にした。それは土地の記憶でもある。今も作品に使うのは、土地の水を吸い上げる雑草がほとんどだ。「草の種類によってうまく灰になり、泡を生む温度が違う。私がするのはいい泡を出してもらうこと」

「Liquid Sunshine/そらにみつろうか」(撮影・岡村喜知郎)

 紫外線を含む光のエネルギーを蓄えて暗闇で一定の間、光り続ける蓄光ガラスを使う作品にも取り組む。昨年暮れから今年三月にかけて富山市ガラス美術館で開かれた「インタラクション:響きあうこころ」展では、天上から蓄光ガラスを含んだ素材でしずくのような造形をつり下げた。人が訪れるとセンサーで会場が暗くなってガラスがほんのりと光る仕掛けだ。
 一九年に世界最大のガラス美術館として知られる米・コーニングガラス美術館が、毎年、世界のガラス作家一人に贈る賞に選ばれ、今年は作品がニューヨーク・タイムズに掲載されるなど世界が注目する作家となった。九月に北陸三県で開かれる工芸の祭典「GO FOR KOGEI 2021」では、石川県小松市の那谷寺の茶室を会場に出品を予定。どんな作品が見られるのか楽しみだ。

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