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シンガポールのサッカー界も襲った新型コロナ「とても無力感」アルビレックス新潟Sの難波CEOが描く未来とは

2020年5月11日 21時07分

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相手陣内に攻め込むアルビレックス新潟シンガポールの選手(クラブ提供)

相手陣内に攻め込むアルビレックス新潟シンガポールの選手(クラブ提供)

  • 相手陣内に攻め込むアルビレックス新潟シンガポールの選手(クラブ提供)
  • アルビレックス新潟シンガポールの難波CEO(クラブ提供)
 新型コロナウイルスの脅威は、東南アジアのサッカーシーンものみ込んだ。シンガポールプレミアリーグは3月末から無期限延期となり、国の職場や学校の閉鎖、外出を制限する「サーキットブレーカー(遮断措置)」によって、各チームは活動停止の状態が続く。この苦境をどう受け止め、どう乗り越えていくのか。アルビレックス新潟シンガポール(新潟S)の最高経営責任者(CEO)、難波修二郎さん(44)に聞いた。
 4月8日から職場や店舗が閉鎖され、食料の買い出しなどを除く外出は原則禁止された。その後、外出時のマスク着用が義務化され、サーキットブレーカーの違反者に対する罰則も強化された。
 ある日本人が会社に出向いたところを見つかり「罰金どころか、いきなりビザの取り消し、24時間以内の国外退去、永久入国不可。厳しく、徹底されていますね」と難波CEO。
 シンガポールリーグは2月29日に開幕し、スタジアムでは全入場者の体温チェックが実施された。だが、新潟Sの第3節アウェー・ブルネイDPMM戦(3月14日)は、ブルネイ政府が感染防止を目的に外国人の入国を禁止したため直前になって開催延期。第4節のタンジョンパーガー・ユナイテッド戦は無観客で開催されたが、同24日にリーグの無期限延期が決まった。
 難波CEOは「われわれは社会の問題を解決する存在でありたい。にもかかわらず、人が集まれないというだけで手も足も出ない。とても無力感を感じました」と振り返る。
 新潟Sは「特例で認められた外国資本のチーム」で、リーグ規定では日本人とシンガポール人のオーバーエージ(24歳以上)2人を除き、原則23歳以下で戦うことが義務付けられている。
 「うちの選手は基本的に単年契約です。23歳以下というルールがあるので、今年23歳になる大卒1年目の選手は来年はいられません。ここで1年間活躍して、飛び立っていってほしいけど、このチャンスを逃すことはステップアップのチャンスを逃すことと一緒なんです。(試合がない状況は)選手にとってはつらいですね」
 選手たちはコーチの指導を受けながら自宅で筋トレやヨガをしたり、近所を走ったりして最低限の体力維持に努めているという。オンラインに切り替わった子どもたちのサッカースクールにも必ず参加。「選手がお手本となるプレーを見せたり、アドバイスしたりして、子どもたちが選手と一緒にレッスンを受けられるようにしています」
 暗中模索、試行錯誤の日々。クラブの大幅な減収は必至で、サッカーのない日常で新たな収入源を見つけるといっても容易ではない。この難局に何ができるのか。コロナ後のサッカークラブをどう思い描いているのか。
 同CEOは「フェーストゥーフェースの意義を再定義しないといけないと思っています。人が集まる、人に会うとはどういうことなのか」と投げ掛け、こう続けた。
 「どこかに集まる、人に会うというのは熱量、エネルギーを感じるということだと思うんです。サッカーを見るだけ、情報を得るだけなら『DAZN(ダゾーン)』で十分です。スタジアムで熱量を感じてもらい『来て良かった』というモノをつくっていかないと存在価値はなくなります。何となく試合をやっているようでは駄目なんです。何のために『行く』のか。何のために『オンラインにする』のか。より明確に整理されてくるだろうし、整理しないといけないと感じています。熱やエネルギーを人に伝えるのはどういうことなのか、どうしたら伝えられるのか。もう一回、しっかり議論しようと思っています」
 サッカー本来の価値を研ぎ澄まし、スタジアムで観戦する意義を改めて創出していくのは第一義。その上で、社会的信用の獲得、社会インフラとして情報発信力の強化、スポンサー企業の投資効果向上、スポーツ会社として健康や命をケアする新事業の構築などに向け、同CEOは「新しいビジネスをやりたい」と意欲的だ。
 サーキットブレーカーの期限は6月1日。市中の感染者数は目に見えて減り、収束に向かっている。当面は無観客でリーグを再開し、徐々に観客を入れながら「7月中旬、もしくは8月に元のリーグの形に戻れればいいかなとみています」と同CEO。歓声が飛び交う週末が戻ってきた時、クラブとしても新たな一歩を踏み出すことになるはずだ。
 ▼難波修二郎(なんば・しゅうじろう) 1975(昭和50)年7月7日生まれ、高松市出身の44歳。大阪体育大、大阪体育大大学院を経て、2000年にFC東京入社。09年に退社後、米国へ渡る。14年にアルビレックス新潟シンガポール入り。最高執行責任者(COO)を3年務め、20年1月CEO就任。「シンガポール代表やJリーグでプレーするような選手を育てる育成機関として結果を出したい」と言う。
 ▼アルビレックス新潟シンガポール 現J2新潟が若手の育成・強化、日本とシンガポールの懸け橋になることを目的に2004年1月に設立。同年シーズンから特例で認められた外国資本のチームとしてシンガポール・Sリーグ(現プレミアリーグ)に参戦。11年リーグカップ初優勝。16、17、18年リーグ3連覇。17年までは日本人選手だけで編成。18年からリーグ規定が変更され、今季は24歳以上のオーバーエージ2人(日本人1人、シンガポール人1人)を除き、原則23歳以下で戦う。本拠地は同国西部にあるジュロンイーストスタジアム(2700人収容)。重富計二監督(40)。
 ▼シンガポールプレミアリーグ 1996年に「Sリーグ」として発足。今季は9チームによる3回戦総当たりで争う。リーグの競技力強化とファン獲得の施策として過去には韓国、中国、フランス、マレーシアなど海外からチームを招聘(しょうへい)しており、現在はアルビレックス新潟シンガポールとブルネイDPMMの2チーム。
 ▼シンガポールの新型コロナ感染状況など 外務省によると、5月2日時点のシンガポールの累計感染者数は1万7101人、退院者数は1268人、死亡者数は16人。新規感染者は932人で、そのうち905人はドミトリーに居住する外国人労働者。難波CEOによると、シンガポール人と永住権保持者に対する政府の補償は給与の75%と手厚く、12月までは何らかの補償があるという。また、2カ月分の外国人雇用税が免除されるほか、事業のオンライン化にかかる費用などの補助もあるという。

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