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鈴木亜由子の恩師から本番3日前に送られたLINE 内容は意外なものだった【満薗文博コラム】

2021年8月7日 17時57分

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高橋昌彦監督

高橋昌彦監督

 五輪女子マラソンの3日前、つまり4日夕方に届いたLINEは意外なものだった。「今日は父の命日でした。2014年、日本郵政グループ女子陸上競技部創部1年目の8月4日、米国ボルダー合宿中に他界。休廃部を繰り返し、無職になるたびに心配を掛けたんだと思います。何も言わず、ほとんど怒られた記憶もない優しい父でした」。それ以外に、何も書かれていなかった。送り主は、日本郵政の高橋昌彦監督(56)だった。
 同部の1期生、鈴木亜由子が、7日に札幌の東京五輪・女子マラソンで走る目前のことだった。高橋監督は、私が長年交友したマラソン界の名伯楽、故・小出義雄さんの下で、コーチ修業を積んでいた頃からの知り合いである。一本立ちを期して幾つかの企業に移ったが、雇い先の事情で定着に至らなかった。一方で、彼のお父さんのことは何も知らなかった。それが、なぜ、教え子の大一番を前に、突然私に「父の命日」を伝えて来たのか。
 だが、私には分かる。高橋監督は、そんな文面で「父に捧げる究極のやる気」を、誰かに伝えたかったのだろう。
 果たして、結果は、亜由子19位。彼女は、汗と泣きと笑いの入り交じった顔でゴールした。そして言った。「監督と歩いて来て、最後まで後押ししていただきました。感謝しています」
 レースの後で、私は彼にLINEを送った。「苦しかっただろうけど、(亜由子さんは)笑顔のゴール。本当にお疲れさまでした」。あれから5時間。高橋監督からは、まだ返信がない。彼は何を思うのだろう。(スポーツジャーナリスト)

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