(23)「ごはんの約束」に奮起

2020年2月26日 02時00分 (5月27日 03時54分更新) 会員限定

肺炎で入院中に、声を失う恐怖の中でも筆者(手前)に積極的に話し掛けてくれた男性看護師

 二〇一六年春、肺炎で集中治療室に入って数週間がたち、私は心身ともに疲弊しきっていた。気管挿管で声が出ない上に、鎮痛薬で意識がもうろうとした。気管切開の手術も決まり、私は完全に心を閉ざしていた。
 以前のように自分の声で会話できない。その上、自分の意思で体も全く動かせない。はたから見れば、私は「意思のない人」に見えたかもしれない。
 そんな中で、ある男性看護師は私に積極的に声をかけてくれた。彼は私の担当になると、看護業務をてきぱきとこなし、コミュニケーションを熱心に図ってくれた。「佐藤くんは入院前は何してたの?」。彼は文字盤を手に持ち、笑顔で私に見せた。
 彼の質問に対し、私は文字盤に視線を送って答えた。短いフレーズで「社長」と。彼は「社長? 若いのにすごいね」と言ってくれた。それに対して私は「(社長)だった。小さい会社の」とつけ加えた。
 私は卑屈になっていた。声を失ったら仕事を続ける自信がなかった。「寝たきり社長」じゃなくなったら、みんなから見放されるんじゃないか-。ひとりぼっちになる気がして怖かった。
 彼は私のそんな心境を察したのか、こう言った。「僕、いつか佐藤くんの声を聞いてみたいと思...

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