(25)短いチューブにかけ

2020年3月25日 02時00分 (5月27日 03時54分更新) 会員限定

気管切開後にのどに挿入した短いチューブ。今も私ののどに入っている

 「佐藤さん、気管切開の手術は完璧でしたよ」
 四年前の春。手術後に執刀医の言葉を聞き、安堵(あんど)した。声帯に損傷はなく、「声を取り戻すことができるかもしれない」「まだ仕事をすることができるかもしれない」と期待が持てた。
 集中治療室から一般病棟に移動したが、体調は悪く、首元の傷が痛んだ。チューブを入れているため痰(たん)も異常に増えた。十五分に一回、吸引をしないと窒息死してしまうほどだった。
 一方、病棟でインターネットが使えるようになったことは大きな希望だった。多くの人にメールなどで励まされ、ネットで「声を取り戻す方法」を調べ続けた。情報を得るたびに、執刀医に伝えた。
 執刀医も熱心に応え、さまざまな医療機器を取り寄せてくれた。だが、現実は残酷だった。いくら試しても声は出ない。生まれつきの障害がない人はそれらの方法で声が出るようだが、私の場合は違った。失敗に終わるたび、悔しくて泣いた。
 結局、声が出ない状態は三カ月ほど続いた。残された方法は一つ。それは気管内に入れるチューブを通常の五分の一ほどの、二センチほどのものに交換すること。だが短いチューブにすると、誤嚥(ごえん)の恐れや痰が取れ...

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