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加藤沢男―内村航平『日本の美しい体操』系譜…19歳金の橋本大輝に先駆者は言った「頑張ってほしいねえ」【満薗文博コラム】

2021年7月29日 16時35分

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加藤沢男さん(2016年11月撮影 )

加藤沢男さん(2016年11月撮影 )

 体操男子には「至難の業(わざ)」がある。吊り輪、床、跳馬、あん馬、平行棒、鉄棒の6種目のどこに、そんな「わざ」があるというのか。「技」ではない「業」である。全種目を演じて総合力1位を競う個人総合優勝者を「キング・オブ・体操」と呼ぶ。
 加藤沢男さんは74歳。28日夜、個人総合の激闘を、茨城県つくば市の自宅テレビで見た。橋本大輝の、最終種目・鉄棒での大逆転劇を見届けると、はなはだ失礼ながら、僕は、その加藤さんの携帯電話を鳴らした。加藤さんはうれしそうに言った。「よかったねえ」。ここで終わるかと思ったら加藤さんは続けた。「橋本君はこれからだね」
 1968年メキシコ、72年ミュンヘン大会の個人総合を連覇した加藤さんは、橋本に新たな夢を託しながら、その前途は、決して楽なものではない、と言いたかったのだ。「一つのオリンピックごとに、採点の見直しが行われ、新しい基準も生まれる。常に目や耳も前に進まなければいけないから大変だよ」
 オリンピックは、新しい競技が加わり、一方で既に実施競技から姿を消したものもある。野球、女子ソフトボールのように、復活―除外を繰り返す競技も。そんな中で体操は1896年第1回アテネ大会から欠かさず続けられてきた。だが、意外なようだが、中断もあったが、120年を超える歴史の中で、個人総合の連覇者は過去に4人しかいない。
 はるか昔の1908(明治41)年ロンドン―12年ストックホルム大会を制したアルベルト・ブラグリア(イタリア)、52年ヘルシンキ―56年メルボルンのビクトル・チュカリン(ソ連)、それに加藤沢男さん、そして記憶に新しい、2012年ロンドン―16年リオの内村航平の4人だけ。4人のうちの2人は日本選手である。
 加藤―内村に流れてきたのは「日本の美しい体操」。そして今また、19歳、橋本の体操も美しいものである。夢を託すように「頑張ってほしいねえ」と、加藤さんは言った。
 (スポーツジャーナリスト)

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