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一二三、冷静な闘志

2021年7月26日 05時00分 (7月26日 05時01分更新)
男子66キロ級決勝でジョージアのマルグベラシビリ(下)から技ありを奪う阿部一二三

男子66キロ級決勝でジョージアのマルグベラシビリ(下)から技ありを奪う阿部一二三

 金メダルを決めても、表情を一切変えない。コロナ禍の五輪。さまざまな思いが込み上げる。男子66キロ級の阿部一は厳しい顔つきのままだった。「このような状況で五輪が開催されて、たくさんの人のおかげでたどり着けた」
 妹の詩が優勝した瞬間をウオーミングアップ会場のモニターで確認した。「すごい燃えた。もう絶対やってやる」。重圧は全く感じず、闘志が湧いてきた。
 自らの柔道を体現した。「見ている人がワクワクする柔道を」。前に出る。一本を狙う。準決勝では相手を高々と持ち上げ、豪快な背負い投げ。決勝では技ありを奪っても攻めた。
 2017、18年世界選手権の優勝後、丸山城志郎(ミキハウス)と熾烈(しれつ)な五輪代表争いを繰り広げた。「この苦しい時期を乗り越えたら、さらに強くなれると思った。丸山選手の存在は本当に大きかった」
 ライバルに勝つため、得意の担ぎ技以外も磨いた。この日も初戦、準々決勝と2試合連続で袖釣り込み腰のフェイントを入れてからの大外刈り。足技へのコンビネーションといった緻密さも加わった。
 日体大時代から付き人を務める片倉弘貴さんも昨年12月の丸山戦までの過程で「あの期間の練習がさらに強くさせた」と感じていた。阿部一は「丸山選手の分も背負って闘った」。柔道史に残る24分の激闘が、初の五輪でも生かされた。
 23歳の金メダリストは座礼をして畳を下りた。ようやく感情をあらわにし、「人生で最高の一日」と喜びに浸った。 (森合正範)

 阿部 一二三(あべ・ひふみ、パーク24)14年に男子史上最年少の17歳2カ月で講道館杯全日本体重別選手権制覇。世界選手権は17、18年に優勝し19年は3位だった。五輪は初出場。得意は背負い投げ。兵庫・神港学園高−日体大出。168センチ。23歳。兵庫県出身。


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