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粘り一本、歓喜の詩

2021年7月26日 05時00分 (7月26日 05時01分更新)
女子52キロ級でフランスのブシャールを破って優勝し喜ぶ阿部詩

女子52キロ級でフランスのブシャールを破って優勝し喜ぶ阿部詩

 畳を何度もたたき、ガッツポーズを繰り返す。うれしさのあまり、泣き笑いで顔はくしゃくしゃ。体全体で感情を表現した。「初めてのような感覚が決勝が終わった後に舞い降りてきました」。阿部詩は女子52キロ級で日本史上初の金メダリストになった。
 成長の証しだった。2016年12月にシニアの国際大会初参戦以来、海外勢に敗れたのは19年11月の1度だけ。その相手が決勝のブシャールだった。当時は競った展開で延長になり、「何をしていいのか、パニックになった」。
 だが、この日は延長になっても冷静だった。粘り強く、集中力の切れかかったブシャールを寝技に持ち込み、一本勝ち。「ライバルで尊敬する選手。最後の相手にふさわしい。勝ててよかった」。心身の強さが際立った。
 5歳から始めた柔道。最初はあまり好きではなかった。夢中になったきっかけは、兄の一二三が全国中学校大会を制したこと。「私もお兄ちゃんのようになりたい」。しかし、なぜ勝てるのか、「恥ずかしいから」と直接聞くことはできない。練習や映像を見て盗み、自分風にアレンジ。自分の柔道スタイルは「七十パーセントくらいは兄の影響」と話す。
 21歳の金メダリストは、試合後、一二三の決勝を会場の片隅からじっと見つめていた。勝利の瞬間、晴れ晴れとした笑顔で両手を上げ、兄よりも喜んでいた。 (森合正範)

 阿部 詩(あべ・うた、日体大)17年に国際柔道連盟主催のワールドツアーで史上最年少の16歳で優勝。18、19年世界選手権優勝。五輪は初出場。得意は袖釣り込み腰、内股。兵庫・夙川学院高出。158センチ。21歳。兵庫県出身。


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