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柔道金の阿部兄妹 努力家の一二三 天才肌の詩

2021年7月26日 05時00分 (7月26日 05時01分更新)
柔道で兄と妹そろっての同日優勝を果たし、金メダルをかじる阿部一二三(左)と詩=25日、日本武道館で(今泉慶太撮影)

柔道で兄と妹そろっての同日優勝を果たし、金メダルをかじる阿部一二三(左)と詩=25日、日本武道館で(今泉慶太撮影)

二人三脚互いに「おめでとう」

 歴史的な瞬間は、対照的な表情だった。兄は畳の上で、冷静な表情。先に金メダルを決め、畳の外で見守っていた妹は、両腕を突き上げて跳びはねた。一二三と詩の阿部兄妹。男子66キロ級と女子52キロ級で同日金メダルを果たした。
 二人の夢が結実した。
 東京五輪への始まりは二〇一三年九月八日。一二三の大会を応援するため、中学一年の詩は父浩二さん(51)、母愛さん(49)とともに埼玉県内のホテルに宿泊していた。三人は早朝に起きて、テレビをつけた。「トーキョー」。画面から聞こえてくる声。東京開催が決まった瞬間、気持ちが高ぶる。詩は思った。「東京五輪に出て優勝したいな」。そして、両親と話した。「一二三と二人で出られたら最高やな」
 努力家の一二三と天才肌の詩。スター性のある二人は「兄妹であり、ライバル」と口をそろえる。先を走っていたのは一二三。開催地が東京に決まった翌一四年からシニアの舞台でも台頭し「東京五輪の星」と呼ばれた。兄とともに妹も成長。一八年世界選手権で兄妹世界一に輝き、順風に見えた。
 だが、一二三が三連覇を狙った一九年世界選手権、丸山城志郎(ミキハウス)との準決勝。ウオーミングアップ会場の大画面に兄が敗れる姿が映ると、妹は悔しがった。「ホンマ、ホンマ、何やっているの!」
 先に五輪代表を決めたのは詩。今度は一二三が追い掛けた。「絶対、五輪を決めないといけない。妹が刺激になった」。気合が入る。まるで詩に背中を押されているかのようだった。
 昨年十二月十三日。丸山との異例のワンマッチ。24分の激闘を制し、代表を決めた。一二三は泣きじゃくった。会場で、詩も泣き崩れていた。「全身震えていました。あの闘いを見られたことに感謝します!」
 時に引っ張り、時に追い掛けた。表彰式の前、抱き合って互いに言った。「おめでとう」。二人で歩んだからこそ、たどり着いた高みだった。 (森合正範)
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