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【中村佳央評論】詩は運もあった 阿部兄妹まだまだ伸びしろもある

2021年7月25日 21時58分

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兄と妹そろっての同日優勝を果たし、金メダルをかじる阿部一二三(左)と妹詩

兄と妹そろっての同日優勝を果たし、金メダルをかじる阿部一二三(左)と妹詩

◇25日 東京五輪 柔道(日本武道館)
 男子66キロ級の阿部一二三(23)=パーク24=と女子52キロ級の阿部詩(21)=日体大=がいずれも金メダルを獲得。「きょうだい同日金メダル」を成し遂げ、”世界最強兄妹”となった。
   ◇   ◇
 まずはひと言、予想通りです。きょうだいでの同日金メダルは初めて、女子52キロ級の金も初めて。これは、すごいこと。なかなかできないことだ。私もアトランタ五輪に兄弟3人で出たので感じることだが、一方が勝つともう一方もすごくパワーが出る。片方が負けると、自分が勝っても…という気になってしまう。そんな点からも、今日は妹の詩が先に試合をして勝っていったのが兄にもいい流れになってつながったのではないか。今日はすべて、阿部きょうだいのためにある日だった。
 兄の一二三は、最初から一本を取りに行っていた。担ぎ技を研究されてかかりにくいと思うと、前にかける振りをして大外刈りに切り替えた。自分の技に自信を持っているからこそできたことだ。相手選手たちは今のルールをよく考え、試合時間が4分と短いことから、粘って粘って延長戦に持っていって何とかしようという考えで来ていた。だが、結局そこまでもたなかった。一二三にしたら、逆に闘いやすかったのではないか。全戦を通して、危ないところはなかった。指導を1つももらわずに終えたことは、本当に相手が怖がっていたということだろう。圧勝というしかない。
 妹の詩は、運もあった。準決勝では延長で技ありを取って勝ったが、海外だったらそうは判断されず、次の展開になっていたかもしれない。決勝では、相手のブシャール(フランス)は逃げながらも、かなり技をかけていた。詩は最初に指導を1つ取られたが、海外だったら技をかけていないと判断されて2つ目の指導を取られていたかもしれない。そうすれば、流れが変わっていただろう。だが、そうはならず、相手が先にバテてしまった。日本での開催で、運も味方につけた。
 ただ、ひとつ言えるのは、詩は立ち技に定評があったが、寝技もかなりやりこんできたのではないかということだ。立ち技を警戒されていて、得意の袖釣り込み腰もなかなか入れなかったが、寝技の強さを見せつけた。それが決勝で生きた。
 次のパリ五輪に向けて、2人はさらにマークされ、研究されるだろう。だが、3年しかないということは、相手の研究期間もそれだけ短いということ。本人たちも、連覇まであと3年でいいかという気にもなる。もちろん、今回の金メダル獲得でさらに人気が出て、練習時間を取りにくくなるだろう。だが、まだまだ伸びしろもある。次も楽しみだ。(旭化成元監督、1993ハミルトン世界選手権86キロ級金メダル)
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