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コロナ下の音読、マスク越しでも伝わる「母音はっきり」

2021年7月22日 05時00分 (7月22日 05時00分更新)
画面を通し、庄野さんから通る声の出し方を学ぶ児童ら=愛知県犬山市の城東小学校で

画面を通し、庄野さんから通る声の出し方を学ぶ児童ら=愛知県犬山市の城東小学校で

 新型コロナウイルス禍で続くマスク生活は、学校の音読にも影響を与えている。国語で音読をする際、児童の声が小さく、聞こえづらくなっているという。マスクをしていても人に伝わる発声方法とは−。愛知県犬山市の城東小学校は今月上旬、アナウンサーを講師に招いて特別授業を行った。 (北村希)
 講師は、子どもから高齢者までを対象に音読の講座を開く東海テレビアナウンサーの庄野俊哉さん(55)。学校から依頼を受け実現した。感染対策のため、全校の各教室をオンラインでつなぎ、庄野さんは別室でカメラに向かって呼びかけた。「大声と通る声は違います。通る声は遠くまで届いて相手に伝わる声。通る声を目指しましょう」
 まずは座る姿勢から。背中を握り拳一個分、背もたれから離し、両足を肩幅に開いて肩の力を抜く。呼吸は「口をポカンと開けて息を吸うのではなく、鼻から吸って口から吐こう」と助言した。一息で長く音が出せると、途切れず余裕を持って読めるそうだ。
 発音は「あいうえお」の母音が重要といい「苦手な子が多い『さ行』も『ら行』も母音がしっかり出ていれば、はっきり発音できる」と庄野さん。意識的に大きな口を開けるよう呼びかけ、児童はマスクの中で口を精いっぱい開けて発声していた。
 授業後、六年の有馬采希(さき)さんは「マスクのせいで口を開けることを意識しなくなってしまった。聞き返されることが多いので大きく口を開けて話したい」と笑顔で話した。
 若原公代校長によると、児童はこの一年以上、さまざまな場面で大声を控えるよう言われ続けており、教師が指示しなくても控えめな声で音読をする。さらにマスクで覆われているため、周りからはより聞こえづらい。コロナ禍で教室で全員一斉に読むことは避けているが、一人ずつの音読は続け、音読の宿題は毎日のように出ている。庄野さんは「声に出して読むことは子どもたちの五感を刺激してくれる。思い切り声を出せないこの期間に、音読を嫌いになってほしくない」と話す。
 マスクのせいで話が子どもたちに伝わりづらい、という悩みは教師側も同じ。庄野さんはこの日、教職員向けにも講座を開き、「良い声を出そうとしなくてもいい。間をしっかり空けるなど、相手に伝えることを一番意識してほしい」などと助言した。

日本語理解や脳トレ効果

 小学校の国語の新学習指導要領解説では、「音読には自分が理解しているかを確かめ、理解したことを表出する働きがある。表出することは他の児童の理解も助ける」などと記載がある。
 国語教育に詳しい植草学園大名誉教授の野口芳宏さんによると、日本語として標準的な教科書の文章を声に出して読むことで、日本語の持つリズムや味わいを感じながら、言葉の意味を捉えられる。
 文脈の理解には黙読が適しているが、黙読が正しくできているかは音読してみないと分からない。教師は読みが苦手な子を認識でき、その場合は早い段階で個別指導が必要だという。音読は場所や人数を選ばずでき、練習しすぎて困ることもないため、宿題に出やすい側面もあるそうだ。
 コロナ下の音読について野口さんは「マスクをしているなら遠慮して小声にする必要はなく、普通の声で読めばいい。逆に音読は必ずしも大声で元気に読む必要はない」と話す。悲しい話など、文脈を反映した音読が理想と説く。
 人に伝わる読み方は大切で「口を大きく開けた方が聞いている人にきれいに伝わる。今は難しいが、口の形の指導もしてほしい」と求める。
 脳科学の観点から見ると、音読は脳のトレーニングに良いとされる。脳機能が専門の東北大の川島隆太教授によると、音読は文字を読みながら発声と耳で聞くことを伴うため、脳が活性化する。黙読より広範囲の大脳の領域が働くそうだ。

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