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トヨタ自動車、東京五輪CM撤退の衝撃…コロナ禍での強行開催を支援すれば企業イメージの悪化につながりかねない

2021年7月21日 13時09分

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◇ヘンリー鈴木のスポーツ方丈記
 東京オリンピック・パラリンピックで最高位スポンサーのトヨタ自動車が、五輪に関するテレビCMを国内では放送しないことに踏み切った。開幕直前の東京五輪を襲った衝撃は、1984年ロサンゼルス大会から続いてきた商業五輪体制が崩壊に向かうきっかけとなるかもしれない。
 国際オリンピック連盟(IOC)の財政基盤を支える最高位スポンサーは「ワールドワイド・パートナー」と呼ばれ、トヨタ自動車のほかにコカ・コーラ、インテル、ビザ、パナソニック、アリババ、オメガ、ブリヂストンなど世界的な企業15社が名を連ねている。五輪ではその他に五輪開催地に限定した「ゴールド・パートナー」「オフィシャル・パートナー」などの国内スポンサーがあるが、これらが最高で年間25億円前後の協賛金なのに対し、ワールドワイド・パートナーは同100億~200億円といわれ、桁違いだ。
 それほどの資金を供出するトヨタ自動車が、その見返りともいえるCM放映の権利を放棄するのだから、ただ事ではない。さらに豊田章男社長ら幹部が開会式に出席しないことも明かし、これに呼応するようにパナソニックも楠見雄規社長が出席見送りを表明。ゴールド・パートナーのNTTなど多くの企業も、欠席表明が相次いだ。
 五輪でスポンサー企業が台頭してきたのは、84年ロサンゼルス大会からだった。その背景には、76年モントリオール大会が空前絶後の赤字を計上したことにある。3000億円以上を負担することになった州や市は、その後約30年にわたり、増税などによって負債を返済した。
 この事例から、住民の拒否などで開催地の立候補を見送る都市が続出。五輪の存続危機となったIOCはスポンサーを1業種1社としてブランド化させ、放映権も入札制にすることで多額の資金を集めることに踏み切る。プロの参加も容認して大会の注目度を上げることで多額の協賛金をスポンサーは出すようになり、84年大会は税金を一切使うことなく民間資本のみで運営することに成功した。現在の商業主義は、この流れの中にある。
 ただ、この商業五輪にも限界がある。巨大マネーが動くようになれば、五輪の主役である選手を生みだし、手中にする国際競技連盟や各国競技団体の力は増す。そのためIOCは収益の9割をこれらの組織に分配し、常に顔色をうかがっている。これらの資金がアフリカなど発展途上国のスポーツ普及、強化に寄与したことは間違いないが、半面で五輪開催都市への資金援助は限られ、東京大会は当初850億円のみだった。米国のような巨大企業が限られている国は、結局は不足分を税金で補うようになり、もとのもくあみだ。
 そのような中で最高位スポンサーが今回の五輪から一歩引く立場を表明したことは、IOCにもショックが走っただろう。コロナ禍での強行開催は、聖火リレーでもその資金をバックアップするスポンサーの宣伝用大型自動車がランナーを先導することが批判され、最近でも開閉会式の音楽担当だった小山田圭吾氏が過去に障がい者いじめを自慢していたことが明らかになって辞任するなど、五輪を支援することが逆に企業イメージを悪化させることにつながりかねない。
 加えてほとんどの競技が無観客となったことで、飲料メーカーなどは会場での独占販売権も意味がなくなった。クライアントなどに日ごろの感謝を込めたチケットも無効となり、自社製品のキャンペーンで顧客にチケットをプレゼントした企業は、当選者に代替の品を送る作業に追われているという。
 五輪のスポンサーとなることは大きなリスクを背負うことを開幕直前に世界に知らしめてしまった、この東京五輪。オリンピックはこれからどこへ、どのように向かっていくのだろう。そのようなことも考えながら、見つめていこうと思う。
  ◇  ◇  ◇
 ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長、同論説委員などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまで中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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