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黒漆で影 自然映す 村田佳彦さん 個展「光陰」 福光美術館  

2021年7月17日 05時00分 (7月17日 10時55分更新)

村田佳彦さんと近作の「シルエット−そびえたつ−」=富山県南砺市の福光美術館で

 富山県南砺市在住の漆造形作家村田佳彦さん(43)の個展「光陰」が、同市の福光美術館で開かれている。山、海、風、鳥や動物など、自身が日常の中で感じた自然をモチーフに、流麗なボディーラインと伝統的な漆の技法が生み出す漆黒の造形は、影を生み出す一瞬の光を感じさせる。(松岡等)
 村田さんは一九七七年、群馬県桐生市生まれ。金沢美術工芸大で漆を学び、木工技術を習得しようと長野県上松技術専門校木工科へ。しかし機械作業が多く、木の塊から作品を削り出す技法は「ほぼ独学」。その後、金沢卯辰山工芸工房で漆の技を磨いた。
 「黒の漆は影のようだと思い、学生時代から影をテーマにしてきた」。今回の展示でメインとなった「シルエット」のシリーズもその延長にある。作品「しずみゆく」は、石川県珠洲市の海岸で見た夕日を表現した。徐々に暗くなっていく水平線に沈む太陽。それが沈みきろうとする最後、一筋の光が見えるかのようだ。

【右】「シルエット−いきあかる−」(高さ39センチ、幅133センチ、奥行き51センチ)【左】「シルエット−いわばしる−」(高さ53・5センチ、幅27センチ、奥行き10・5センチ)


 南砺の自然や風土、暮らす人の生活にひかれ、二〇〇五年に移り住んだ。家の周囲で聞こえる風の音、訪れる小動物たち。「生活の中での気づき、自然からいただいたものを形にしている」という。
 「いわばしる」は、同市利賀村に向かう道路脇のがけで湧き水が岩にぶつかる様子を、「いきあかる」は自宅近くを飛び交っていた三羽の鳥を作品にした。カエデやトチなどの木の塊から削り出したシャープで滑らかな曲線と、空間に立つ絶妙なバランスが作品に動きを生んでいる。

【右】「シルエット−しずみゆく−」(高さ22センチ、幅133センチ、奥行き7センチ)【左】「シルエット−なみをおもう−」(高さ19・5センチ、幅14センチ、奥行き25センチ)


 国内外での展覧会に出品し、作品は米ミネアポリス美術館にも収蔵された。「地元・南砺での初めての個展が、美術館とは恐れ多くて」とはにかむが、彫刻を思わせる造形は、工芸の枠を超えて現代アートの世界からも注目される。
 福光美術館が地元の若手作家を取り上げるシリーズの第一弾。二十四日午後二時から、村田さんと土居彩子学芸員とのトークイベントがある。会期は八月一日まで。火曜日休館。無料。
※作品はいずれも岡村喜知郎撮影

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