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<今 教育を考える>デジタル・シティズンシップ 鳥取県情報モラルエデュケーター・今度珠美さん

2021年7月15日 05時00分 (7月15日 05時00分更新)
鳥取県情報モラルエデュケーター・今度珠美さん

鳥取県情報モラルエデュケーター・今度珠美さん

 国のGIGAスクール構想により、小中学生のタブレット端末の活用が進んでいる。学びの可能性が広がる一方で、ネット上の危険や依存などの懸念もある。心配事から子どもを守りつつ、攻めた活用をするには−。「デジタル・シティズンシップ教育」を進める鳥取県情報モラルエデュケーターの今度珠美さんに、疑問をぶつけた。(聞き手・北村希)
 −デジタル・シティズンシップ教育とは。
 欧米で普及する、日本の情報モラルに代わる教育といわれます。日本で進めてきた情報モラル教育が、インターネットの危険や悪影響を学ぶ傾向にあるのに対し、デジタル・シティズンシップ教育は、ICT(情報通信機器)の積極的な利活用が前提です。児童生徒に主体的に考えさせ、行動につなげる指導法も特徴です。私は十五年以上、情報モラルの指導をしてきましたが、「〜しません教育」が本当に子どもの行動に結び付いているのかという思いがあり、デジタル・シティズンシップ教育に着目しました。
 授業の冒頭で、どうネットを活用しているか聞くと、後ろめたそうに答える子どもたち。利活用により広がる創造性や可能性をきちんと伝えてこなかった結果では、と反省します。日本の情報モラル教育も、世界標準に更新すべき時に来ていると思います。
 −フィルタリング(機能制限)設定などもしないということか。
 よく勘違いをされますが違います。有害なサイトへのアクセスは年齢に応じて制限します。ただ、会員制交流サイト(SNS)やゲームなどを「依存するに決まっている」と決めつけ、やみくもに制限するのは良くありません。ネット媒体には(1)繰り返し使いたくなる(2)「いいね」などの反応が欲しくなる(3)生活に役立つ−の三つの要素があります。
 授業でLINE(ライン)はどれに当たるか生徒に聞くと、(1)と答える子もいれば、既読が気になるから(2)、連絡手段と情報収集に使っているから(3)と答える子も。人によって使い方や捉え方は異なるのです。(1)に偏っている子は例えば通知をオフにして(3)の要素を増やすなど、バランスを取る方法とその理由を学ぶことが大切なのです。
 −家庭での使用ルールはどうあるべきか。
 子が守りにくい約束ではないこと、守れなくても子を責めないことが大事です。私はルールではなく約束と呼んでいます。例えば「一日何時間」と利用時間を制限しがちですが、場所や行動と結び付けた方が意識しやすい。布団の中、食事中、勉強中は使わないなどと家族で約束を考えます。今何を優先すべきかを考える習慣もつけておきましょう。博物館や映画、キャンプなど、文化的な経験を増やしてあげることも重要です。
 切り離して考えなければいけないのは、使いすぎの原因が家庭環境や発達特性にある場合。福祉や行政支援など別のアプローチが必要です。
 −子どもが自分で統制できる良い使い手になるには。
 約束を守れない場面にはどんなジレンマがあり、どう乗り越えるかを自分たちで考えることが、次の行動につながります。例えば、SNSへの投稿を休みたいけれど、仲のいい友達との付き合いがあり言い出せない子がいる。中学の授業では、この子の悩みを解決する方法を具体的に話し合ってもらいます。正解は一つではなく、生徒たちはいろんな立場に立って考えるようになります。学校が決めた規則を家庭に伝えるだけでは、子どもが責任を自覚するのは難しい。トラブルは起きるものなので、それを学びに変えていってほしいと思います。

 いまど・たまみ 鳥取大大学院修了。国際大学GLOCOM客員研究員。年間150校超の小中高校で授業、講演。主な著書に「デジタル・シティズンシップ/コンピュータ1人1台時代の善き使い手をめざす学び」(共著、大月書店)、「スマホ世代の子どものための情報活用能力を育む情報モラルの授業2.0」(共著、日本標準)


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