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中能登の乗念寺に「ヒカゲノカズラ」 どんどん生える 縁起物

2021年7月14日 05時00分 (7月14日 05時03分更新)
境内で3年ほど前から少しずつ増えているヒカゲノカズラ

境内で3年ほど前から少しずつ増えているヒカゲノカズラ

  • 境内で3年ほど前から少しずつ増えているヒカゲノカズラ
  • 地表をスギゴケのように覆うヒカゲノカズラ=いずれも中能登町能登部下の乗念寺で

暁星住職「これも何かの縁」

 中能登町能登部下の浄土真宗本願寺派の乗念寺では、三年ほど前から境内でシダ植物の一種「ヒカゲノカズラ」が増え、参拝者らの話題を集めている。地面をはい回るように伸びるのが特徴で、万葉集や古事記に登場し、古くから縁起物として祭事などで使われてきた。暁星(あけぼし)光住職(47)は「由緒ある植物が突然増えてきて驚いたが、縁起の良いご縁では」と温かく見守っている。 (室木泰彦)
 本堂前の広い境内には大小さまざまな木が並び、隙間に雑草も生えている。三年ほど前からその雑草の部分に、スギゴケのような草が生え始め、今は庭の広い部分をびっしりと覆う。所々からツクシ(スギナの胞子茎)を細長くしたような胞子囊穂(のうすい)が生えていて、独特の雰囲気を醸し出す。境内で初めて見る草だったため、名前を調べてみてヒカゲノカズラだと分かったという。
 暁星住職によると、以前は大木を含めもっと多くの木があったが、枯れる木が出始めたため約十年前から徐々に伐採。すると、数年前からヒカゲノカズラが姿を現してきた。暁星住職は「詳しい理由は分からないが、木が減ったことで日なたの部分が増えたことが原因かも」と話す。
 境内のすぐ裏手にため池があり、周辺は山の斜面。もともと山側に生えていた個体から胞子が飛ばされ、日なたが増え適度な湿り気もある境内で定着し始めたのではないかとみられる。
 ヒカゲノカズラの名の由来は「日陰(ひかげ)の葛(かつら)」。実際は日なたを好むため理由は不明だが、昔から新年や祝いの席の飾り物として使われるなど暮らしの中で親しまれてきた。古事記に存在が記述されるほか、万葉集でも歌で「日陰」と詠まれている。
 暁星住職は「刈り取って乾燥した茎も茶色のひもとして使えそうなほど丈夫。ただの草ではないと思っていたら由緒ある植物だった。縁起物でも使われるようで、これも何かの縁」と話している。

◇歴史500年以上 ◇貴重な文献も

 乗念寺は五百年以上の歴史があるといい、所蔵する古文書などは二〇一六〜一七年度に調査、整理が行われ六百七十三点と確認され、町指定文化財になっている。
 町によると、戦国時代の本願寺からの礼状「本願寺御印書」は全国で最も古いとされる。文書の内容から、能登部地区の特産品の麻織物が戦国時代から始まったことが分かる。他にも中世の能登部地域の支配実態などがうかがえる貴重な文献が多いという。

 ヒカゲノカズラ 常緑のシダの仲間。北半球の温帯地域に分布し、国内では北海道から九州の山間地や里山などに生息する。名前とは裏腹に日当たりのいい、適度に湿り気がある場所を好む。5ミリほどのひものような形状の茎が地表を張り巡らすように伸び、ところどころで枝分かれし、枝の先端に5センチほどの円柱状の胞子囊穂を付けるのが特徴。ひも状の茎は丈夫で、葉も加工できるため、古来、縁起物として祭事の飾り、芸術作品の素材などとして活用されている。

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