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原田裕規さん「Waiting for」 呼び起こされる「不在」 金沢21美で個展

2021年7月3日 05時00分 (7月3日 11時10分更新)
100万年前あるいは100万年後をイメージして作られた架空の世界をCGIで表現した作品《Waiting for》の1シーン(©Yuki harada)

100万年前あるいは100万年後をイメージして作られた架空の世界をCGIで表現した作品《Waiting for》の1シーン(©Yuki harada)

  • 100万年前あるいは100万年後をイメージして作られた架空の世界をCGIで表現した作品《Waiting for》の1シーン(©Yuki harada)
  • 不用品から集めた膨大な写真を見続けるパフォーマンスを記録した映像作品《One Million Seeings》の1シーン(©Yuki harada)

 映像の現代性を鋭く問う作品で注目を集める若手アーティスト原田裕規(ゆうき)さんの個展「Waiting for」が金沢21世紀美術館長期インスタレーションルームで開かれている。コンピューターで生成した架空の風景と、写真を24時間にわたり見続けるパフォーマンスの記録。その二つの長大な映像作品が、スクリーンの裏と表に同時に投影されるインスタレーション作品だ。
 二つの映像のうち一つは新作シリーズ「Waiting for」。CGI(コンピューター・ジェネレーテッド・イメジェリー)技術で生成されたのは「100万年前あるいは100万年後」をイメージしたという荒涼とした風景の映像。これに、原田さんが可能な限り調べ上げた、地球上に存在する動物の俗名を読み上げる自身の声が重なる。その数は2万464種類、読み上げる時間は30時間に及ぶ。
 その風景は、動物が生まれる前なのか、死に絶えてしまった後の地球なのか、あるいはSF映画が描き出すような別の惑星の風景なのかと、見る人の想像をかきたてる。
 もう一方の映像作品「One Million Seeings」は、2019年に東京・新宿のギャラリーの窓辺で、不用品回収業者などから集めた写真群を原田さんが手に取り、約24時間にわたり見続けるパフォーマンスの記録だ。
 原田さんは1989年、山口県生まれ。個人が大切にする記念写真や芸術写真とは全く異なり「彼岸の側から撮られたような」という意味合いから「心霊写真」と呼ぶこうした写真にこだわってきた。
 窓辺から見える風景を背景に、手元にさまざまな写真が映し出される。写真というメディアが、社会の中で持つ固有性と匿名性という相反する特性をあぶり出すかのようだ。
 展示にあたり「現代の『風景』とはどんなものだろうかとずっと考えていた」というコメントを寄せた原田さん。架空にもかかわらずどこかで見たことのあるような荒涼とした風景と、プライベートであったのに今はうち捨てられてしまった写真を見続ける身体。背中合わせのスクリーンに映し出される二つの映像は、圧倒的な情報量と原田さんの声と視線による身体感覚の濃密さの一方で、「不在」の感覚を強く呼び起こす。
 個展は、若手を中心に今後の活躍が期待される作家を紹介するアペルトシリーズの一環で、10月10日まで。 (松岡等)

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