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<ユースク> デジタル×リハビリでサポート 岐阜・岐南町に医療的ケア児新施設

2021年7月5日 00時00分 (7月5日 10時41分更新)
 医療的ケア児のための新たな施設を岐阜県岐南町に開所します。「デジリハ」という設備を室内に設けます。デジリハを活用した取り組みにトライするところを含め、新施設を取材してもらえませんか?(医療法人「かがやき」総合プロデューサー平田節子さん)

かがやきキャンプの外観=岐阜県岐南町で

 3月にユースクで取材した医療的ケア児の記事を見て、新たな支援施設の担当者から投稿が寄せられました。その中にあった「デジリハ」なる用語が気になって取材を始めると、増え続けるケア児を支えようと奮闘する施設の人たちの頑張りが見えてきました。
 (石井宏樹)

壁に映像投影、触って遊んで運動

 6月15日に岐阜県岐南町に開所したのは、医療的ケア児を預かる医療型短期入所施設「かがやきキャンプ」。施設から約8キロ圏内にある岐阜、愛知県の0〜6歳のケア児を日中に最大5人まで受け入れる予定だ。

プロジェクターの映像に触れて、プールで体を動かす利用者の女児。右は藪本保施設長=岐阜県岐南町で

 在宅医療を手掛ける医療法人「かがやき」が日本財団の助成を受け、運営する。保護者は、預けている間、日常の介護を任せることが可能だ。
 子どもは医師や看護師ら専門家が連携する管理下で、食事や運動など成長に必要な生活動作を「練習」できる。研修も受け入れ、ケア児支援の人材育成の場にもしていく。
 一番の特長は新たに導入した「デジリハ」と呼ばれる設備。「デジタル」と「リハビリ」をくっつけた造語で、NPO法人「ウブドベ」(東京)が開発した。
 プロジェクターに映した映像とさまざまなセンサーを組み合わせることで、子どもの体の動きと画面をリンク。ゲームで遊びながら自然にリハビリの動きができる仕組みとなっている。
 ウブドベの岡勇樹代表理事は「遊んでいるうちにリハビリが終わっている。そんな体験を目指している」と説明する。

デジリハを説明する岡勇樹さん


プールで負担軽く

 キャンプでは、施設の入り口と温水プールに計3台のプロジェクターを用意。壁に映し出された巨大な映像の中のクジラや車に子どもが触ると音が出てそれらが動きだすなど、体の部位や動きに合わせて約30種類のゲームがそろう。
 水の浮力や抵抗を利用して、体幹の筋力が弱い医療的ケア児でもできるだけ自分の力で動けるように慣れてもらう。かがやきの市橋亮一理事長は「まだ導入が少ないデジリハと、プールを組み合わせたのも珍しく、世界初ではないか」と話す。
 15日の開所式では、医療的ケア児の女児(2)がプールでデジリハを初体験。生まれて初めてのプールに入って手足をばたばた動かした。
 腕にセンサーを着けた女児が腕を上下させると、「シャリン、シャリン」と音が鳴って、画面上でキラキラ輝く宝石が落ちてくる。初めは不思議そうだったが、腕と宝石の動きのつながりが分かると、何度も腕を動かした。
 女児は陸上では数秒も立てないが、水中では軽く体に手を添えてもらった状態で数分間立つことができた。藪本保施設長は「陸上では重力でできない運動体験を楽しく学べていた。画面や音も分かりやすく、子どもの運動を引き出せるようアイデアを出していきたい」。

かがやきキャンプについて語る藪本保施設長


現場では試行錯誤

 新しい取り組みだけにうまくいくことばかりではない。開所前日の準備作業に密着すると、プールのセンサーがなぜか反応しない。天井裏の配線まで調べても結局、理由は判明せず。当面は使える別のセンサーでしのぐという。

不具合の原因を調べるウブドベの関係者


 岡さんは「今はまだ安定とは程遠い。導入施設から意見をもらいながら改善を続けていかないといけない」と明かした。

かがやきキャンプについて話す市橋亮一理事長


 医療的ケア児・家族支援法は6月に成立したばかり。教育現場や福祉施設の体制整備は進んでいない。「できないかもしれないけどやってみようという姿勢を子どもに見せたい」と藪本施設長。市橋理事長も「スタートは難しい。でも、先行事例として頑張っていけば、次の人たちに何がうまくいかなかったかを教えられる」と語る。

親の会が法人化

 医療的ケア児の親たちでつくるグループが、一般社団法人「医療的ケアPPS.lab」を15日に立ち上げる。企業や行政に協業を呼び掛け、ケア児を広く知ってもらう。
 法人を立ち上げるのは、医療的ケアが必要な2歳の娘を持つ名古屋市瑞穂区の飯村紫帆さん(37)。飯村さんは娘の出産後、ブログなどを通じて全国の医療的ケア児の親たち約40人とつながり、行政の支援情報などを共有してきた。
 親の会として企業などにケア児の周知などの協力をお願いした際に「法人からの依頼しか受け付けていない」と断られた経験があり、医療的ケアPPS.labの設立を決めた。行政の支援情報の提供や各種申請の代行を行うほか、食事や歯磨きなどのオンライン講習会を開催していく予定だ。
 医療的ケア児・家族支援法も成立し、ケア児を社会全体で支えていく仕組みづくりが求められている。飯村さんは「医療的ケア児についてまずは興味を持ってもらい、ケア児を多くの人に身近に感じてもらいたい」と話している。
 問い合わせはメール=iimurashiho.pps.lab@gmail.com=まで。

 医療的ケア児 人工呼吸器や胃ろう などを使い、日常的にたんの吸引や経管栄養などの医療的なケアを必要とする子ども。医療の発達に伴って年々増加傾向にあり、現在は全国に2万人ほどいるとされる。
 6月に成立した支援法では、保護者の付き添いをなくすため、保育所や学校に看護師らの配置を要請。国や自治体には、保育所や学校の支援を求めている。


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