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6種目での超人的な演技は叶わなくとも内村航平は「鉄棒の声が聞こえる」境地【東京五輪連載】

2021年6月30日 06時00分

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体操男子の内村航平

体操男子の内村航平

◇東京五輪連載「挑戦2021 初の五輪延期を経て」
 2016年リオデジャネイロ五輪の個人総合で見せた、大逆転ドラマのVTRのようだった。東京五輪の代表選考会を兼ねた5日の全日本種目別選手権予選(高崎)。内村航平(32)=ジョイカル=が鉄棒で伸身新月面の着地をピタリと止めると、会場が沸騰した。得点板に浮かんだ「15・766」に、内村は「出過ぎですよね」と苦笑い。現行ルール下での自己最高得点だった。
 1年前の夏、苦渋の決断をした。リオ五輪後に両肩や腰を痛め、代表落ちも経験。肉体的にピークを過ぎた現実を直視し、6種目の「個人総合」での五輪挑戦をあきらめ、鉄棒のスペシャリストに転身すると発表した。「6種目やることへのプライドはあった。この状況で輝ける方法が、これしか見つからなかった」。悩み抜いての再出発だった。
 同年11月に東京で開かれた国際大会では「五輪が『できない』ではなく、『どうやったらできるか』を考えて」と異例のスピーチ。自身もコロナ禍での五輪開催に複雑な思いがなかったわけではない。批判は覚悟の上で、トップアスリートとして選手たちの心情を代弁した。五輪延期で生じたこの1年、内村も葛藤を続けていた。
 自己最高スコアを出した翌6日の種目別決勝でも15点台の高得点をマーク。4大会連続となる東京五輪出場を決めたときは「体操が心底好きで、どんなに打ちのめされても続けてきた」と感傷を口にした。
 6種目で超人的な演技を披露したかつての再現は叶わなくとも、今の内村は「鉄棒の声が聞こえる」境地にある。H難度「ブレトシュナイダー」を取り入れ、美しく進化した鉄棒。その一瞬が、スポーツの真価を示してくれる。
▼内村航平(うちむら・こうへい)1989年1月3日生まれ、長崎県出身の32歳。162センチ、52キロ。日体大出、ジョイカル。個人総合で2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪金メダル。団体総合でリオ五輪金メダル。昨年からは種目別の鉄棒に専念。コナミスポーツを経て16年12月から日本体操界初のプロ選手となった。
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